中国の「メジャーアプリ」、個人情報保護に甘さ 工業情報化省がテンセントなどを名指しで批判

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IT大手のテンセントは個人情報保護への認識不足を当局から名指しで批判された(写真:編集部撮影)

中国工業情報化省は11月27日、スマートフォン向けアプリの個人情報保護の監督管理に関するフォーラムを北京で開催した。そのなかで、同省幹部が問題点の改善に向けた大手IT企業の認識不足を厳しく批判する異例の一幕があった。

「一部のメジャーアプリの開発元は、繰り返し改善を促しても十分反省せず、傘下の別のアプリに同種の問題を残しているケースがある」

そう発言したのは、工業情報化省情報通信管理局の副局長を務める魯春叢氏だ。同氏によれば、こうしたIT企業は個人情報保護の改善を軽視しており、見つからなければよいという甘えの心理や、競合アプリもやっているからという言い訳が目立つという。

魯氏はさらに、ネットサービス大手の騰訊(テンセント)を名指しし、同社の人気対話アプリ「微信(ウィーチャット)」や「QQ」、アプリストアの「応用宝」などのサービスが(個人情報保護に関する)規定違反を繰り返していると指摘した。

アプリ修正を元に戻す悪質事例も

「最大の問題は経営陣に当事者意識がなく、責任逃れに終始していることだ。一部の大手企業ではアプリの個人情報保護の改善をエンジニアに丸投げしており、上層部が実態を把握していない」(魯氏)

テンセントと同様に名指しされたネットサービス大手の新浪(シナ)では、傘下のスポーツ情報アプリ「新浪体育」が規定に違反した個人情報の収集をしていた。ところが、工業情報化省の指導を受けてアプリを修正したはずにもかかわらず、その後の再調査で同様の問題が見つかった。

また、一部の企業は意識が(ユーザーや監督当局ではなく)競合アプリのほうばかり向いており、相手に責任を転嫁してアプリの改善を故意に遅らせていた。甚だしきに至っては、いったん施した修正を次のバージョンアップで元に戻す悪質な事例まであったという。

これらの問題は、工業情報化省が中国で多数のネットユーザーに利用されているメジャーアプリを調査・分析して発見したものだ。

本記事は「財新」の提供記事です

調査対象は電子商取引(EC)最大手の阿里巴巴(アリババ)系の40本余り、ショート動画大手の字節跳動科技(バイトダンス)系の30本余り、テンセント系の30本余り、検索最大手の百度(バイドゥ)系の20本余りなど、大手IT企業のほとんどの人気アプリを網羅している。

(財新記者:何書静)
※原文の配信は11月27日

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