皮膚科医269人に製薬企業が払う年4億円の中身 なぜ少数の医師に製薬マネーが集中するのか
その金額は2年間の総額で約7億8900万円。平均で300万円、13名の著者が1000万円以上の金銭を受け取っていました。他の診療科に関するこれまでのわれわれの研究結果(腫瘍内科:年間平均115万円、整形外科:年間平均126万円)と比較しても、皮膚科診療ガイドライン著者(年間平均150万円)は、より高額の謝礼を受け取っていたことが明らかになりました。この結果は先の齋藤医師らによって報告された、製薬企業が皮膚科領域に多くの資金を投じていることを裏付ける結果となりました。
また、これらの謝礼はごく一部の著者に集中しており、謝礼の受領金額上位10%の著者(約30人)が総額3億9000万円(49.5%)の謝礼を受け取っていました。謝礼が集中していた著者たちは、皮膚科領域のキーオピニオンリーダーと呼ばれる医師たちです。
彼らは大学教授などの権威的な地位につき、高い専門性を持ちあわせるため、各専門領域において非常に大きな発言力を有しています。多くの医師たちは、彼らの意見を参考に日々の治療薬の選択や患者の診療を行っています。講演会などでキーオピニオンリーダーに自社の製品を紹介してもらうことは製薬企業にとっては売り上げに直結するため、非常に大きな意味を持ちます。われわれの研究はこれらの日本の製薬市場の現状を如実に表した結果といえます。
高額な謝礼金と高額な新薬
最多の謝礼金を支払っていたのはマルホ(約1億5000万円)で、次いで田辺三菱製薬(約7200万円)、大鵬薬品(約5300万円)でした。今回、提供金額が大きかった製薬会社は、いずれも皮膚科領域で高価な生物学的製剤を販売しています。
例えば、マルホは2015年に乾癬に対する治療薬としてセクキヌマブ(コセンティクス)を、田辺三菱製薬は同じく乾癬治療薬のインフリキシマブ(レミケード)を2002年に、大鵬薬品はグセルクマブ(トレムフィア)を2018年に発売しました。これらの製薬企業が新薬の販売を促進するために講演料や執筆料として高額な謝礼を支払うことで診療ガイドライン著者とのつながりを求めることは合理的といえます。
【2020年12月15日12時46分追記】初出時、乾癬治療薬の名称に誤りがありましたので、上記のように修正しました。
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