皮膚科医269人に製薬企業が払う年4億円の中身 なぜ少数の医師に製薬マネーが集中するのか

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ガイドライン別 ガイドライン著者の受領金額の中央値と受領割合

さらに、利益相反の開示状態を評価できた26の診療ガイドラインのうち、11の診療ガイドライン(42.3%)で著者の利益相反の存在を認める一方、具体的な著者名、企業名、金額等の記載はありませんでした。13の診療ガイドライン(50.0%)で利益相反欄が存在しませんでした。すなわち、90%以上の診療ガイドラインで、利益相反の開示が十分に行われていなかったことになります。

昨今、世界中でこれらの利益相反が医学に与える影響について注目が集まっています。診療ガイドライン著者という公益性が高い職にある立場を考えれば、製薬企業などとの利益相反は適切に管理・公開されなければなりません。

アメリカではアメリカ科学アカデミー(日本でいうところの日本学術会議)が2011年に診療ガイドライン著者の選考基準について、「診療ガイドライン著者の50%以上はいかなる商業上の利益相反がない人物にするべきである。診療ガイドライン委員長は一切の商業上の利益相反があってはならない。すべての利益相反は金額にかかわらず申告するべきである」と定めています。

日本においても日本医学会が2017年に定めた同様の診療ガイドライン著者選考基準が存在します。その基準によれば、「1つの企業・団体から受取った講演料(/執筆料)が年間50万を超える場合は自己申告しなければならない。1つの企業・団体からの講演料(/執筆料)の受領金額が年間200万円を超える委員数が過半数を超えてはならない。利益相反の状態については診療ガイドライン上で公開しなければならない」と記載されており、日本皮膚科学会はこの日本医学会の基準をそのまま採用しています。

日本の利益相反基準は有名無実・形骸化

つまり、年間50万円を超えなければ何社から謝礼を受取っていても一切申告すらする必要はないということです。さらにガイドライン著者から除外する基準額が年間200万円以上という非常に高い値であることによって、本研究が明らかにしたように90%以上の著者に謝礼の受け取りが存在するという現状につながっています。

また、今回の製薬マネーデータベースを用いた調査により、17人いるアトピー性皮膚炎診療ガイドライン著者のうち2人の著者で利益相反の過少申告が発覚しました。アメリカやヨーロッパ諸国の基準と比べると、日本の利益相反基準は有名無実・形骸化しており、利益相反の管理は不十分といわざるをえません。

現在の利益相反申告・公開方法は不十分なものであり、より強固なルール作成が必要です。具体的にはアメリカ科学アカデミーやアメリカ皮膚科学会と同様に、いかなる金額であっても利益相反の申告を行うこと、金額の大小にかかわらず利益相反がある著者数を50%以下にすること、利益相反申告の正確性を確認できる公的な製薬マネーデータベースの作成・活用などが求められます。

村山 安寿 東北大学医学部医学科3年

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むらやま あんじゅ / Anju Murayama

1999年、北海道帯広市生まれ。東京都育ち。2015年、函館ラ・サール中学卒業。2018年、日比谷高校卒業。2018年、東北大学医学部入学。大学2年次より、医療ガバナンス研究所にてインターンを行う。常磐病院乳腺外科医の尾崎章彦医師に師事し、探査ジャーナリズムNGO・ワセダクロニクルと医療ガバナンス研究所の共同プロジェクトである、マネーデータベース「製薬会社と医師」に参加する。

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