やる気が出ない人が疑うべき「ある病気」の正体 「最近TVドラマが退屈になった人」ほど要注意

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しかし、通常は疲れやストレスの原因が一段落したり、休養を十分に取ったりすると、気力・体力は回復します。一方、認知症グレーゾーンの特徴として見られる無気力は、もっと病的なものです。

たとえば、長年続けていた趣味を、急にやらなくなった、というのは要注意です。あくまで、長年というところが肝心で、去年から始めたとか、定年後に人からすすめられて渋々始めたものをやめたのであれば、さほど心配はいりません。

一方、20年も続けて師範にもなっていた生け花をあっさりやめてしまったり、日曜日になると毎回早起きをして出かけていた釣りに、ぱったり行かなくなったり、長年大切に育ててきた庭のバラがすっかり枯れてしまっても、水をやろうともしない。そんな変化が見られたら、認知症グレーゾーンの疑いが濃厚です。

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認知症の兆候というと、人の名前が出てこないといったもの忘ればかりが注目されますが、「めんどうくさい」に由来する行動上の変化は、記憶力の低下と同じくらい重要なキーワード。もの忘れは周囲が気づきやすいのに対し、「めんどうくさい」はわかりにくい。

わかっても認知症と結び付けて考える人はほとんどいません。ふつうに暮らしているあなたや、あなたの家族の中にも、認知症グレーゾーンが潜んでいる可能性が十分にあるということです。

「TVドラマ」がつまらなくなったら要注意

認知症グレーゾーンの時期に見られる「めんどうくさい」は、日常生活のさまざまな場面で表れてきます。たとえば、私が診ている患者さんの中には、「以前はNHKの朝ドラや大河ドラマを欠かさず観ていたのに、最近はつまらなくなって観るのをやめました。でも、歌番組や大相撲は楽しく観ています」と話す方がいらっしゃいます。

連続もののドラマは、3カ月、半年といった一定期間、ストーリーをずっと記憶して追い続けるところに醍醐味があります。毎回ドラマの最後で流れる次回のあらすじを観て、「来週はどんなふうに展開するのだろう」とワクワクし、次の放送時には前回の内容の記憶がぱっと蘇り、新しい展開にのめり込んでいく。

ところが、認知症グレーゾーンになると、先週までのストーリーや、登場人物の役どころや名前をしっかり覚えられなくなったり、覚えておくことがおっくうになったりします。つまり、連続ドラマが面白くなくなるのは、ストーリーがつまらないからではなく、記憶力や気力の低下によって、興味を保ち続けことができなくなることが原因である可能性があるわけです。他方、歌番組なら、自分の記憶に残っている昔の歌が流れてきたら、「わあ、懐かしい」「これ、知っている」ということで楽しめます。

スポーツは、その場の勝ち負けでシンプルに楽しめます。とくに、わずか数分で勝負がつく相撲は、認知症の高齢者の間でも人気があります。私の患者さんの中にも相撲ファンはたくさんいます。テレビ番組の好みが変わったのは、こうしたことが原因かもしれないのです。

朝田 隆 メモリークリニックお茶の水理事長・院長

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あさだ たかし / Takashi Asada

認知症の早期発見・早期治療に特化した「メモリークリニックお茶の水」理事長・院長。東京医科歯科大学特任教授。筑波大学名誉教授。医学博士。1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。40年以上にわたり、2万人を超える認知症、および、その予備群である軽度認知障害(MCI=グレーゾーン)の治療に従事。認知症予防&治療の第一人者として診察にあたる傍ら、テレビや新聞、雑誌などで認知症の理解や予防への啓発活動を続けている。

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