宇宙一孤独な人工物、ボイジャーの秘密 JAXAではなくNASAに行きたかった理由、幼年時代のヒーロー

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双子も珍しくない宇宙探査機たち

このDSNの管制室の正面右手に、文字ばかりが並んだスクリーンがある。これはDSNが交信している探査機の一覧表で、古いものから順番に並べられている。

その右手のいちばん上の2行はこう書かれている:
   VGR2 T+ 36 248/07:32
   VGR1 T+ 36 233/09:05

これを解読すると次のような意味である。
   「ボイジャー2号 打ち上げから36年248日7時間32分」
   「ボイジャー1号 打ち上げから36年233日9時間5分」

そう、ボイジャーは実は双子の宇宙探査機なのだ。2機はまったく同一の設計で、1号よりも2号のほうが打ち上げられたのが少しだけ早かった。

そういえば日本ではかつて、双子のうち後に生まれてきたほうを兄/姉とする慣習があった、なんていうことを思い出す。人間の双子はまれだが、宇宙探査機には双子のものが多くある。

初の木星・土星探査機であるパイオニア10号と11号、初の火星着陸を成功させたバイキング1号と2号、そして火星ローバーのスピリットとオポチュニティもそうだ。宇宙探査機のコストの大部分は製造コストではなく開発コストである。だから2機作ったほうがコストパフォーマンスがいいし、万が一、一方が失敗しても、もう一方でミッションを遂行できるからだ。

後に打ち上げられたボイジャー1号は、姉の意地、かどうかは知らないが、途中で2号を追い抜き、現在では地球から最も遠い位置にある人工物となっている。その距離は2014年4月現在で約190億キロメートル。

ピンと来ないだろうか。これは1秒で地球を7周半する光でさえ片道で17時間もかかる距離である。ボイジャーに「もしもし」と問いかけ、「はいはい」と返って来るまでに1日半かかるのだ。もしこの距離を時速300キロメートルの新幹線で走ったならば、7200年もかかる。今から7200年前といえば、古代メソポタミア文明すら歴史の舞台に登場する前である。

こんな遠くから、ボイジャーはいまだに地球にデータを送り続けている。なぜそんなことが可能なのか。巨大なアンテナを使っていることはもちろんだが、もうひとつ「コツ」がある。ゆっくりと話すことだ。

たとえば、校庭の向こうにいる友達と大声で話をする状況を想像してほしい。会話の内容を理解するには、相手にゆっくりと話して(叫んで)もらう必要があるだろう。同様に、はるか彼方から来るボイジャーの微弱な電波を理解するために、ボイジャーに非常にゆっくりとしゃべってもらっている。具体的には約160bpsで、1MBの画像を1枚ダウンロードするのに約15時間もかかる遅さである(余談であるが、携帯電話の通信速度が電波の悪いところで遅くなるのも、同じ理由である)。

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