コカ・コーラが「たまに買う客」を重視する真相 ターゲットマーケティング信者が見落とすもの
また年1回以下の購入者が約50%もいる。実はコークの購買客のほとんどは、滅多にコークを飲まないライトユーザーなのだ。もしあなたが年に1回程度しかコークを飲まないとしたら、あなたは典型的なコークユーザーだ。
コークにとってヘビーユーザーとは、1年に3回(4カ月に1回)以上飲む人だ。
よく「上位20%の購買客が売り上げの80%を占める」といわれる。よく知られている「パレートの法則」だ。しかし現実には、長期間にわたって調査してみると、上位20%の購買客は売り上げの80%ではなく50%しか占めない。残り50%の売り上げは稀にしか買わないライトユーザーだ。彼らは買う頻度が低いうえに、他社ブランドも買う。
また長期間調査すると、ヘビーユーザーがライトユーザーやノンユーザーになったり、逆にノンユーザーやライトユーザーがヘビーユーザーになることも多い。
これをわかりやすくたとえると、レストランA店が長年の行きつけだったあなたが、近所にもっと美味しいB店があるとわかって、行きつけの店をB店に変えるようなものだ。これはA店から見ると「ヘビーユーザーが急に消えた」ということだし、B店から見ると「ノンユーザーがいきなりヘビーユーザーになった」ということだ。
私たちはヘビーユーザーを中心に攻めようと考えがちだが、ヘビーユーザーはそもそも数が少ないうえに、ライトユーザーに変わることも多い。結果として努力が徒労に終わることが多いのだ。むしろライトユーザーからノンユーザーまでを広く攻めれば、成功の可能性が高まる。
似たような自社商品を、同じ顧客にどんどん売れ
「ターゲットを絞り込め」とよく言われる。例えばダイエット飲料は女性を対象に広告を出している。しかし実際にレギュラー飲料とダイエット飲料の顧客層を分析すると、ほぼ同じ顧客層に売れている。男女比率もほぼ同じだ。
わかりやすくたとえると、バニラアイスクリームを買う人とショコラアイスクリームを買う人は、同じ人なのだ。同じ人がそのときの気分次第で、バニラを買うときもあれば、ショコラを買うときもある。「そんなの当たり前だ」と思うかもしれない。しかしあなたの会社は、2つの商品の顧客ターゲットを、分けて考えていないだろうか。
コカ・コーラ社がコーク、ファンタ、スプライトなど多くの飲料ブランドを売っているのは、消費者ニーズにきめ細かく応えるためではない。実際に調査すると、飲料ブランドはどこも最も売れているコークと7割の顧客を共有している。つまりコークと各飲料ブランドの顧客はほぼ同じなのだ。どんな製品カテゴリーでも、顧客の多くを最大シェアのブランドと共有する。これを「購買重複の法則」という。
ではコカ・コーラは数多くの自社ブランドを同じ顧客に売って、問題はないのか?
脊髄反射で「同じ顧客に自社商品をいくつも売り込むと共食いになるので、絶対ダメ」と思いがちだが、実はまったく問題はない。要は、どれかが消費者に選ばれればいいのだ。大切なのは市場でブランドが目立つことだ。
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