スラム街で一番怖い存在は「犬」という衝撃事実 危険地帯ジャーナリストが見た世界の闇

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次に、アジアのみならずアフリカでも見られる商売としてカット屋がある。野菜やフルーツを適当な大きさに切るだけ。顧客の多くは調理スペースが大きくない屋台などである。

この商売、間近で見たことがあるが、お世辞にも衛生的とはいえない。そのうえカット面が露出しているので、調理で高熱処理でもされていないと高確率で腹を下すようにも思う。

おかげで、最近では屋台の調理スペースがどうなっているのかをチラっとは確認するようになった。結局、空腹に負けてどうでも良くなってしまうのだが。

ほかにも怪しいニッチな商売はある。これはケニアのキベラスラムで知った。世界最大規模の面積と100万人ともいわれる人口があるキベラでは、多くの人がスラム外へ働きに出る。帰宅時間もまちまちである。

女性にとって不可欠な「送迎ビジネス」

キベラスラムは犯罪が多いことでも知られている。人数が多いのだから比例して多くなるのも当然とは思うが、絶対数が多いので警戒の必要は当然ある。そこで行政が設置したのが街灯である。それも街の暗い場所を照らすため。

「あれができたから暗い場所が減ったよ」

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住人たちはそんなふうに語ってくれたが、犯罪が減ったと実感できる人は少ないように思えた。というのも、大通りから路地の中を送るだけの送迎ビジネスが成り立っているからだ。キベラは大通りから一歩入ると迷路のようになっている。そこを一人で歩くのは危険なので、目的地までついていくという商売だ。

「そんな商売成り立つの? 知り合いとかに送ってもらえば済むだけじゃない」

意地悪くこの仕事を教えてくれた地元民に聞いてみた。「そんなことはない。特に雨の日なんかは誰も送ってくれない。一番危ないのは雨の日なんだ。叫び声も雨音で消されてしまうからな」

特に女性たちにとっては不可欠なサービスらしい。キベラでは強盗のほかにレイプ被害も多い。狙われるのは大抵が狭い路地を歩いている女性で、複数で空き家などに連れ込んで犯してしまうそうだ。そうした被害を防ぐためにもこのニッチビジネスは活用されている。

他にも密告や観光客のアテンド、プラスチック専門の割れ目継ぎなど、とにかく彼らは隙間を探してくるのがうまい。この姿勢は見習いたいところもあるが、なかなか一朝一夕で真似できるものではない。

丸山 ゴンザレス ジャーナリスト、編集者

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まるやま ごんざれす / Gonzales Maruyama

1977年、宮城県生まれ。考古学学者崩れのジャーナリスト・編集者。國學院大學学術資料センター共同研究員。國學院大學大学院修了。無職、日雇い労働などから出版社勤務を経て独立。現在は国内外の裏社会や危険地帯の取材を続ける。著書に『アジア「罰当たり」旅行』(彩図社)、『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)、『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社)などがある。

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