スラム街で一番怖い存在は「犬」という衝撃事実 危険地帯ジャーナリストが見た世界の闇
現在ではビーチリゾートとして知られるタイのパタヤ。ここに20年ほど前に訪れた時のことである。今でこそリゾートホテルが林立するエリアだが、当時は繁華街の裏手などは一面の荒野だった。私が泊まっていたホテルは、そんな場所を抜けた先のバスターミナル近く。当然ながら夜遊びして帰るときは荒野を突っ切ることになる。
ある夜、ひとしきり遊び終えてホテルに戻るとき、夜食用に買ったハンバーガーを持ったまま歩いていた。不意に背後で生き物の気配がした。振り返るまでもなく「グゥルルル」という低い唸り声でわかる。チラっと目をやると複数の黒い影がついてきていた。狙いが私の夜食なのは間違いない(いい香りが漂っていたので)。
結局、そのまま距離を保ったまま早歩き。徐々に距離を詰めてくる犬たちの野生の本能にビビりながらも、こちらの食い意地も負けていない。絶対に渡してなるものかと最後はホテルまでダッシュして事なきを得た。
これは奇跡的にうまくいっただけで、本来は早々に夜食を諦めておくのが正解である。決して真似しないでもらいたい。
なぜここまで犬を恐れるのか。犬に嚙まれてしまうことでの外傷自体が怖いのではない。本当に恐ろしいのは嚙まれて「狂犬病」に感染することである。日本ではほぼ絶滅した感染症だが、海外ではいまだ現役である。この病気、感染して発症したら致死率100%なのだ。もし野犬に嚙まれたら、現地の病院に入院してワクチンを投与してもらうしかない。
しかも、日本にワクチンがないので、現地にとどまって約2週間も投与し続けなければならない。命も大事だし、スケジュールも崩れる。踏んだり蹴ったりである。犬に予防接種でもしていれば大丈夫だが、スラムの野犬がそんなものを受けているわけもない。しかも暗闇で襲いかかってくる野犬に対して人間が対処する手段はそれほど多くないのだ。
狙われて回避できたとしたらそれは運が良いだけ。嚙まれることのリスクがどれほど大きいのかおわかりいただけるだろう。
スラムのニッチなビジネス
ニッチな市場を開拓しろ! ベンチャー企業も大企業もこぞって参入しているニッチとは、ようするに隙間産業なんだと思う。これまで埋まっていた金脈を掘り起こしていくのは、利益を求める企業としては当然のこと。ただし、これは日本に限った話ではない。
「そんなところにニーズがあるのか?」という商売に関しては、スラム街のほうが一枚上手のように思う。ということで、今回は私が見てきたいくつかの底辺ニッチビジネスについて紹介していこうと思う。
まず代表的なところでは、フィリピンのスラム街の「パクパク」の仲卸だろう。パクパクはスラム街のような貧困層が食べる廃棄食品の一般的な呼び方である。これをスラムに運びこむのは、東南アジアでマクドナルドに勝利した唯一の外食企業とされるローカルのファストフードチェーン店「ジョリビー」の廃棄物運搬の運転手がやっているアルバイトだ。
本来ならきちんと廃棄しないといけないチキンなどの食べ残しをスラムに置いていくだけでお金がもらえるのだ。これほど安易なやり方はない。ただし、これは日本でも同様のことが発覚して大問題になったので、日本では応用できないと思われる。
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