「犬は家族を順位付けする」が迷信にすぎない訳

体罰を用いる強制的なトレーニングを正当化

犬のしつけにまつわる間違った理解が広がってしまった理由とは(写真:Halfpoint/iStock)
「犬は家族に順位を付けている」という話が、実際は異なることが最近の研究で明らかになっています。獣医師の奥田順之氏の『“動物の精神科医"が教える 犬の咬みグセ解決塾』より一部抜粋・編集してお届けします。

しつけに関する俗説に要注意

かむ犬に対するしつけに関しては、さまざまな俗説が聞かれます。
「かむ犬には上下関係を教えないといけない」
「リーダーウォークが大切」
「かまれたら、手を口の中に押し込め!」

よく聞くこのようなアドバイスは、本当にかむ行動を解決できるのでしょうか? 結論からいいますと、これらの俗説を信じて対応することは、意味がないばかりか、攻撃行動を悪化させることすらあります。

もちろん、たまたまうまくいく場合もありますが、深刻な攻撃行動に対しては、大抵はうまくいきません。その理由は犬がかむ行動の原因に目を向けていないからです。

犬がかむ原因はひとつではなく、多様な要因が絡み合っており、改善には、それぞれの要因に合わせた対応を行う必要があります。かむ原因に目を向けずに、「かむ犬には〇〇をすればいい」という、短絡的な対応をしても、かみつきが改善されることは稀です。

たとえば、車が動かなくなった時、エンジンが悪いのか、タイヤが悪いのか、電気系統が悪いのか、バッテリーが悪いのか、わからずに対処するエンジニアはいません。

犬と人の関係も同じです。犬がかむ、人がかまれるという関係は、決して良い共生関係とはいえません。その共生関係の破綻がどのようにして起こっているか、その原因もわからずに、「リーダーウォークで上下関係を教える」という対処をしても、エンジントラブルで動かない車のタイヤ交換をするようなものです。

かむ行動には理由があります。それもとても多くの要因があり、親犬からの遺伝、胎児の時の発達、母犬の子育ての仕方、社会化などの発達の問題や、脳や身体の疾患が関わっていることもあります。

そして、どんな攻撃行動でも、飼い主との相互学習の影響は大きいといえます。そのうえ、それぞれの家庭において、それぞれ独自の学習が起こっています。それぞれの攻撃行動は、個々の環境で多様な要因が積み重なって発生しています。これらの要因を知らずして、攻撃行動への対処はできないわけです。

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