サッカー日本代表が「つまらない」と評される訳 攻撃の「看板スター」不在だけではない事情

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メキシコに力の差を突きつけられたように、日本がW杯8強入りするためには、まだまだやらなければならないことはある。

「ロストフの悲劇」の生き証人である原口元気(ドイツ2部・ハノーファー)も「今日がW杯じゃなくてよかった。ここからの2年間をムダにせず、同じ思いをしないようにしたい」と語気を強めた。

そのためには、代表としてチーム完成度を高め、戦い方の幅をさらに広げるのはもちろんのこと、選手個々が突き抜けていく必要がある。

今の日本代表は“夜明け前”か

ザックジャパン時代は香川がマンチェスター・ユナイテッド、本田がACミランと世界的ビッグクラブに所属する選手が何人かいたが、彼らはチームで絶対的中心にはなれなかった。その壁を越える人材に出てきてもらわなければ困る。

イングランドの名門・リバプールでプレーする南野拓実などはその筆頭。久保もビジャレアルでレギュラーを獲得し、来年にはレンタル元のレアル・マドリードに呼び戻される状況を作るべきだ。鎌田も「1人1人がもっといいリーグ、もっといいチームでプレーすることがすごい大事」と自戒を込めて口にしていた。

「日本人選手が50人、100人と欧州でプレーするようになったら日本代表は強くなる」と2002年日韓ワールドカップの指揮官・フィリップ・トルシエ監督は口癖のように語っていたが、あれから20年近い年月が経過し、それは確かに現実になりつつある。

Jリーグにも海外移籍予備軍と言われる若手が数多くいるのだ。だからこそ、頭抜けた存在が続々と出てくることが肝心だ。

「つまらなくなった」と映る今の日本代表は“夜明け前”なのかもしれない。近い将来、本田・香川時代を上回る魅力を感じさせてくれる可能性は大いにある。人気爆発状態になることを期待しつつ、辛抱強く彼らの戦いを見続けるべき。そう強くお勧めしたい。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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