日産、「大赤字決算」に見えた再建へのハードル 競争力ある「新型車」が黒字化のカギを握る

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新車の開発を疎かにしたことで、前回のモデルチェンジから年数を経た車齢の古い車ばかりになってしまったからだ。その結果、奨励金を増やして店頭販売価格をさらに下げないと売れない「負の連鎖」に陥り、かつて高収益を誇った北米事業は急激な収益悪化をたどった。過度な安売りでブランド価値も大きく毀損した。

日産の内田誠・社長兼CEOは決算会見の場で、「改革は着実に進んでいる」と何度も口にした(写真:日産自動車)

拡大戦略が破綻した日産は、過度な安売り体質から脱却して販売を健全化すべく、「台数」から「採算性」重視への転換を宣言。特に安売りがひどかった北米市場などで販売奨励金の削減に取り組み、アメリカでは第2四半期(7〜9月)の1台当たりの奨励金が前年同期より5%減り、平均販売価格が3%上昇したという。

しかし、健全化にはまだ程遠い。アメリカの調査会社オートデータによると、現地における9月の日産車の1台当たりの販売奨励金は平均4499ドル(約47万円)。以前より減ってはいるが、その絶対額はいまだにトヨタやホンダの2倍近い。製品ラインナップの多くを車齢の古いモデルが占めるがゆえに、他社よりも安売りせざるをえないのだ。

製品ラインナップを大幅に刷新

コロナ禍からの販売回復、そして真の意味で「販売の質」を高めるためには、値引きに頼らなくても売れる魅力的な車の登場が欠かせない。

日産は5月に公表した改革計画の中で、「今後18カ月内に世界で12の新型車を投入する」とし、ラインナップを順次刷新する。また、世界で69あった車種を2023年までに55以下に減らし、その分、今後は1車種当たりのモデルチェンジの間隔を従来よりも短縮する考えだ。

日産が9月に発表した「フェアレディZ プロトタイプ」。来年度に市場投入する(写真:日産自動車)

すでに日本では6月に新型コンパクトSUVの「キックス」を発売、北米でも主力のミドルSUV「ローグ」を10月にモデルチェンジした。主力のコンパクトカー「ノート」も今年度内に刷新する。さらに来年度には、世界で新型EV「アリア」の販売を開始し、「フェアレディZ」などのモデルチェンジも控える。

焦点は、これらの新型車が消費者に支持されるかどうか。投入する新型車の多くは世界的に人気が高まっているSUVだが、このカテゴリーは他メーカーも続々と新型車を投入しており、販売競争は激しい。

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昨年度に続き、今年度も巨額赤字が避けられない日産は、来年度(2021年度)に3年ぶりの黒字化を目指している。構造改革計画では、最終年にあたる2023年度の目標として売上高営業利益率5%の達成を掲げており、途中地点の来年度は利益率2%の実現が目標だ。

「相次ぐ新型車投入で下期は関連先行費用が嵩むが、その成果を来年度(2021年度)の黒字につなげたい。固定費の削減を着実に進める一方で、今後は新型車で稼いでいく」と内田社長。製品ラインナップの刷新によって、安売り体質から脱却できるかどうか。日産の経営再建の成否は、これから続々と登場する新型車の競争力にかかっている。

横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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