日産、「大赤字決算」に見えた再建へのハードル 競争力ある「新型車」が黒字化のカギを握る

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6月に発売した新型コンパクトSUV「キックス」。日産は来年度にかけて新型車を相次いで投入する(写真:日産自動車)

「真っ赤か」の悲惨な数字だった。

日産自動車が11月12日に発表した2020年度上期(4~9月期)決算は、売上高が3兆0926億円(前年同期比38%減)、営業損益が1587億円の赤字に転落した(前年同期は316億円の黒字)。早期退職費用や新型コロナウイルスによる操業休止期間の固定費を特損に計上し、最終赤字は3299億円にまで膨らんだ。

日系自動車メーカー各社の上期決算を見ると、コロナ禍からの販売回復の勢いに歴然とした差が出ている。トヨタは7~9月の世界販売台数が前年同期の8%減にまで戻り、ホンダは1%増と大健闘を見せた。一方、新型車が乏しい日産の7~9月は前年実績を17%下回り、販売回復が他社より遅れている。

コロナ影響下でも6293億円の純利益(最終利益)を稼ぎ出したトヨタ自動車をはじめ、ホンダ、スバル、スズキは上期決算で黒字を確保した。日産、三菱自動車、マツダの3社が赤字組だが、中でも日産の損失額は断トツに大きい。同社は年間でも巨額の赤字(営業損失3400億円、最終損失は6150億円)となる見通しだ。

にもかかわらず、内田誠社長はオンライン方式で行った決算会見の席上、「構造改革は着実に進んでいる」「取り組みの成果が上期の数字に出ている」と、再建への手応えを何度も口にした。

その根拠となっているのが、第2四半期(7~9月)の赤字縮小だ。コロナで需要が消失した4~6月は営業赤字幅が1539億円だったのに対し、7~9月は48億円にまで赤字幅が縮小した。主要市場での新車需要回復に加え、固定費削減などの構造改革効果が大きい。

日産は今年5月、再建に向けた事業構造改革計画(新4カ年の中期経営計画)を発表した。販売台数に対して過剰な生産能力の削減を掲げ、上期中にインドネシアでの生産を終了。各地で人員削減も進め、「第2四半期(7~9月期)の固定費は前年同期より12%減った」(アシュワニ・グプタ最高執行責任者)。

ゴーン流「拡大路線」の大きなツケ

さらに内田社長が上期の成果として何度も言及したのが、「販売の質」というフレーズだった。「われわれはかつてのような過度な販売をやめ、販売の質を上げることに注力している。その取り組みの成果がようやく数字に表れ始めている」(内田社長)。

「販売の質」とは1台当たりの採算性を指す。その質(=採算性)の低さこそが、現在の日産が抱える最大の問題だ。

日産はカルロス・ゴーン元会長の下、2010年代に拡大路線を突き進んだ。新車の開発投資を絞って生産能力増強を優先する一方で、ディーラーに値下げ原資となる販売奨励金を大量に支給して、薄利多売で目先の台数を追った。中でもその最前線が、市場規模の大きな北米だった。

が、こうした拡大戦略はやがて行き詰まる。

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