ピクサーに根付く「トイ・ストーリー」の遺伝子

ある日本人社員が振り返る「ピクサー」の25年

――その後、ピクサーの規模はどんどん大きくなっていきます。

社員の中にはエキスパートになる人、ゼネラリストになる人もいました。まったく別の部門に行った人もいる。まだこういう部門がある、こういう仕事があるといった、カチッと固まったものがなかった時期だったので、自分のキャリアは自分で見つける必要があったんです。自分で部署を作っちゃった人もいますよ。

社員の「好き」を大事にする

私もいろいろなことをやらせてもらった。以前からキャラクターが大好きだったので、トイ・ストーリーの次の作品である『バグズ・ライフ』から、キャラクター部門に入りました。ファインディング・ニモの「ニモ」など”かわいい系”のキャラクターを担当し、その流れで『レミーのおいしいレストラン』の「レミー」の仕事をいただいた。

小西園子さん。現在はテクニカル・ディレクターを務める。『トイ・ストーリー2』に出てくる「コニシ・オモチャ博物館」は小西さんの名前からとったもの。トイ・ストーリー4でもキャラクターシミュレーションを担当した(ピクサー・アニメーション・スタジオ提供)

私、ハロウィンのコスチュームを作るのが趣味なんです。そうしたら『メリダとおそろしの森』のときに、キャラクターの服を作らないかと言われた。それをきっかけに、キャラクターの服や髪の毛などを作り、シミュレーションをかけて動かす、シミュレーション部門に移りました。

ピクサーという会社は、社員の興味や好きなことをとても大事にするんです。好きなことって、やっぱり伸びますよね。それにうまく行くと、すごく褒めてくれる。そんな環境の中で、社員は自分たちで自分たちの居場所を作っていくんです。

――規模が大きくなって、使えるおカネが増えたり、仕事の仕方が変わったりしましたか?

使えるお金は、初めの頃とほとんど変わらないですよ(笑)。社員数は1200人近くになりましたが、今では少なくとも3本の映画が同時に動いているので、逆に人が足りなかったりする。

同時進行でも、昔と違ってスケジューリングはしっかりしています。それに社員同士のつながりがとても密で、違う仕事をしていても情報が伝わる。うまくいったことが自然と共有でき、次の作品に反映できるのです。うちのソフトウェアはすべてインハウス(自社開発)なので、ソフトの開発が進むと次の映画ですぐに使える利点もあります。

――技術も随分と進歩したでしょうね。

ピクサーにいると、コンピューターの歴史をみているようです。

トイ・ストーリーのときは、シミュレーション自体がありませんでした。シミュレーションが入ったのは、モンスターズ・インクのときだと思います。サリーの毛とブーのシャツから始まった。シミュレーションが入ってから、表現がより自然になり、強調できるようになりました。

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