若者が「退職代行サービス」を支持する真の理由 どうしても「NO」と言うのが嫌な若者たちの本音

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2019年12月に発売され、人気になった「内定辞退セット」(日本法令)という商品があります。長期化する新型コロナの影響で、この先の就職戦線はどうなるかわかりませんが、少し前までは人手不足による売り手市場でした。多くの場合、学生に選択権があるような状況だったのです。そのため、本命以外の複数社から内定が出ても、学生は辞退します。

ところが、自ら内定辞退の連絡ができない学生が多く、企業との間でトラブルが起きていた。そんなニュースを知った文具メーカーが開発したのが「内定辞退セット」です。

セットの中身は「解説付き表紙」や「キレイに書ける記載例入下敷」、そして便せんや封筒までパッケージされています。内定辞退の模範文例がプリントされた「記載例入下敷き」の上に便箋を載せ、上からなぞって書くだけで、型通りの内定辞退の手紙が出来あがる。

いわばマニュアルに従って、簡単に「NO」を伝えることができるのです。人事部に電話をかけて、担当者に直接辞退を申し出る必要がない。彼らにとってもっとも苦痛を感じる行為を避けられる。500円とコスパ(コストパフォーマンス)もいいので、いまの若い世代に支持されるのもわかります。

「内定辞退が怖い」学生たちの本音

私からすれば信憑性の低い情報なのですが、インターネット上には内定辞退をする就活生に対して「しつこく引き留められた」とか「担当者が家まで説得に来た」なんて体験談がもっともらしく書き込まれています。こんな都市伝説レベルの与太話でも、信じている学生は多いのです。NOを伝えるだけでもストレスのある彼らにとっては、自分の抱えた不安をさらに増す材料になってしまいます。

実際、学生から「内定を辞退したいけど、担当者がどんな反応をするか怖い」と相談を受けることがあります。私は「先生も企業に勤めていたときに採用に関わった経験があるけど、辞退しても気にしないよ。むしろ早めに素直に断られるほうがありがたいんだから」と伝えます。半信半疑で帰っていく学生が多いのですが、結果的に「渡部先生の言う通りでした」で済むケースがほとんどです。

そんな話を就活の前に私がいくら教えても、学生の不安は払拭されません。近年は、同じやりとりの繰り返しです。

内定辞退セットと同様に「退職代行サービス」も話題になりました。会社を辞めたい社員が依頼すれば、退職に関する交渉・事務手続きを代行してくれるサービスです。

このサービスの利用者は、とくに若手社員が多いと聞いて、私には納得です。代行業者に頼めば、利用者は勤務先に退職の意思を直接伝える必要はありません。

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