「話すことがない」と悩む就活生が持つべき視点 エントリーシートは「小さな成長物語」でいい

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前提として言えるのは「あなたが使う言葉でしか、あなたを評価することはできない」という事実ある。就活は、あなたが行ってきたことや感じてきたこと、今後やりたいことを、言葉を用いて理解を深め合うコミュニケーション活動である。

そこで重要なのは、あなたの中にある「言葉にできない気持ち」を言葉にしようとすることに挑む姿勢である。心の中にあるモヤモヤは「うれしかった」「かなしかった」といった単純なものではなく、あなたが大切にしている価値観そのものであり、あなただけの感情と言えよう。

こうした、あなたらしさが宿った気持ちに、適切な言葉を与えようとする作業が、自分の言葉を生むことに直結する。自分の気持ちと向き合いながら、心と言葉を結び付けていく作業が就活の肝となるのだ。実際に行ってきたことや実績は出来事にすぎず、常に、出来事の裏にある背景や心情を言葉にすることを心掛けたい。

面接官が聞きたいのは、あなたの成長物語

ここからは、より具体的な内容に入っていこう。マーケティングには、ストーリーテリングという考え方がある。日本語に訳すと「物語を語る」となるのだが、製品やサービスの良いところをしゃべり倒すのではなく、聞き手の興味を惹き、思わず聞き入ってしまう物語として語ることの重要性を指している。

就職活動においても同様である。自分の長所や魅力を一方的に話し切ったところで、聞き手である人事担当者や面接官の心を動かすことはできない。

人が心を惹かれる物語には、いくつかの法則がある。例えば、なんでもそつなくこなせる器用な人物の話を、楽しんで聞ける人は多くない。途中から自慢話にしか聞こえなくなり、興味が失われていくのは明らかだ。

人の心を動かす主人公とは、どのような人物であろうか。きっと、できることは少ないながらも、その瞬間に自分がすべきことを考え、悪戦苦闘しながら前に進もうとする、名もなき人物である。ダメな自分ながらも懸命にもがき続ける姿が人を惹きつけるのだ。

名作と言われる小説や漫画、映画・ドラマを思い出してもらえば、思い当たるものばかりではないだろうか。やってきたことは小さくていい。成功を収めていなくてもいい。ただ、等身大の葛藤と、なりふり構わず起こした行動を、小さな成長物語として語り切ればいいのだ。

ピンと来た人もいるかもしれない。そう、あなたも、人の心を揺さぶる物語の主人公に十分になりうる。馬鹿がつくほど真面目で、地道に進もうとする姿を、物語で描き切ればいいだけなのだ。

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