三軒茶屋「保護猫と共存する賃貸住宅」の実態 高齢などの事情で飼えなくなる飼い主が多い
東氏が見つけた答えが、猫を媒介として人々がつながる街。サンチャコは猫という付加価値が魅力となって、三軒茶屋という憧れの街でクリエーティブな仕事をしたい人や、住みたい人などが集い、共有スペースや飲食スペースを通じて、近隣の人と交流していく。
文字どおり“猫の手を借りた”わけだ。
では、実際の利用状況はどうなっているのだろうか。
居住スペースだけでなくコミュニティーの場としても
賃貸スペースはタイプ違いで全4戸あり、家賃は共益費合わせて約12万〜約19万円。現在、3部屋が埋まっている状態だ。うち2世帯は、IT企業に勤める若手のビジネスパーソンと、夫婦世帯だという。どちらも猫を飼ったことがない人で、「猫がいる住まい」に憧れて入居を決めたそうだ。
あと1世帯は近隣の大学の教授で、オンライン授業が増えたため、クリエイティブスペースを含めて利用しているそうだ。
人気立地にも関わらず全戸が埋まっていないのは、顧客選別をするマーケティング的営業であることと将来的な家賃下落を抑えることを重視した家賃設定が理由とのこと。
入居するには「1年以内に保護猫を飼うこと、退居するときは連れて行くこと」という条件があるが、強制ではないという。とくに、今いる3匹のうちの白猫は、訪問者を自ら案内してくれる「営業部長」的存在。いろいろな人を呼び込んでくれるので、手放すのはサンチャコにとって痛手かもしれないとのことだ。
飲食スペースとクリエーティブスペースはコロナ禍ということで、12月まで無料にしており、まだ本格稼働はしていない状況。飲食スペースはカフェや近隣住民の話し合い、ちょっとしたパーティー、雑貨ショップなどに利用されている。
「クリエーティブスペースは自粛要請やリモートワークの影響で平日昼間、夜のどちらもよく利用されていると思います。今はニーズをリサーチしているところ。室内のラックも、商品のディスプレー用や物置としてレンタルしてもよいと考えています」(東氏)
クリエーティブスペースは「ねことものづくりを考えるクリエーティブ拠点」と銘打ち、将来的にはものづくりのためのミシンやレーザーカッターなども導入したいという。コミュニティーづくりのため、ワークショップなどのイベント支援も行う。
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