「正月休みの延長」がコロナ対策に役立たない訳 GoToも同時に進める菅政権のちぐはぐな対応

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ところで、今回の政府の要望と日立の対応で、昨年話題になった有給休暇の取得に改めて注目が集まっています。現在、日本の労働者は、平均年18.0日の有給休暇を企業から付与されていますが、取得率は56.3%にとどまっています(厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」)。

近年政府は、働き方改革の一環で有給休暇の取得を推進しており、2019年4月から年間5日以上の有給休暇の取得を企業に義務づけました。従業員の健康を管理する健康経営がクローズアップされ、多くの企業が取得率向上に向けて積極的に取り組むようになりました。

こうした対応によって、日本の有給休暇の取得率は着実に上昇しています。ただ、56.3%という数字は最近では高い水準ですが、ようやく1992年の水準(56.1%)に戻したにすぎません。100%が当たり前という諸外国と比べると格段に低く、主要国で最低という残念な状態が続いています。

なぜ有給取得率が低いのか?

日本の有給休暇の取得率が低いのはなぜでしょうか。まず、諸外国と違って日本企業ではチームワークで業務を進めるので、労働者は自分だけが有給休暇を取って「職場の他のメンバーに迷惑を掛けてはいけない」と考えがちです。

また、日本では、不況時でも従業員を簡単に解雇・レイオフできないので、企業は不況時に備えて要員(必要な人員)に満たない人員しか実配置しません。不況時に適正人数、平常時は人手不足で大残業という状態で、「残業を減らすのがまず先。有給休暇のことは後で考えよう」となってしまいます。

もう一つ注目したいのが、労働者が消化できなかった有給休暇の買い取りです。諸外国では、未消化になった有給休暇の権利を企業が労働者から買い取ることが一般的ですが、日本では原則として買い取りが禁じられています。有給休暇の有効期間は2年で、未消化のまま2年経ったら権利は自動消滅します。企業としては、未消化でも労働者の権利が消滅するだけで、費用負担は発生しないので、積極的に有給休暇の取得を推進するメリットがないのです。

次ページ有給休暇取得率を上げる「3つの施策」
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