「正月休みの延長」がコロナ対策に役立たない訳 GoToも同時に進める菅政権のちぐはぐな対応

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日本の低い有給休暇取得率を向上させるためにはどうすればいいのか? たとえば以下のような施策が考えられます。

Ⅰ.解雇の金銭解決制度の導入
Ⅱ.未消化の有給休暇の買い取り義務化
Ⅲ.国民の祝日の削減

それぞれのねらいを説明しましょう。

まずⅠ.解雇の金銭解決制度。労働者に金銭を支払うことを条件に会社側の解雇を認めるという制度です。ここ数年議論されているこの制度には、各方面から「企業の首切りが横行するようになる」といった強い反発があります。

しかし、実際は逆です。いま日本企業は「不況でも首を切れないから、できるだけ正社員を雇用しないでおこう」と考えますが、この制度によって雇用調整が容易になれば、安心して平時の雇用量を増やすことができます。雇用量が増えれば残業が減り、有給休暇を取得しやすくなります。

次にⅡ.未消化の有給休暇の買い取り。国や労働組合は、「小遣い稼ぎを狙って有給休暇を取得しない労働者が増え、取得率が下がってしまう」と買い取りに反対の立場です。

しかし、諸外国を見ると、真逆のことが起こっています。買い取り義務のある国では、企業は買い取り費用を支払いたくないので、生産性の向上やバックアップ体制など有給休暇の取得に向けた環境整備に真剣に取り組みます。結果的に、生産性が上がり、取得率もアップするのです。

主要国で「2番目に国民の祝日が多い」

最後に、Ⅲ.国民の祝日の削減。日本の労働者はなかなか休まないので、「ならば」と国は国民の祝日を増やし、強制的に労働者を休ませています。平成以降、国民の祝日がどんどん増えて、いまや主要国では中国に次いで2番目に国民の祝日が多い国になりました。

5月・9月・11月・年末年始など祝日が多いので、職場では業務が滞り、平日の残業が増え、「有給休暇どころじゃない」という状況です。国民の祝日を減らせば、労働者は自分の業務状況に応じて柔軟に有給休暇を取得できるようになります。好きなときに休めるほうが休暇の満足度も上がります。

なお、国民の祝日の削減は、労働者の働き方だけでなく、さまざまな産業に好影響をもたらします。まず観光産業では、現在、大型連休に極度に集中している旅行需要が分散し、オーバーツーリズムなど多くの問題の解決にもつながる可能性があります。

休場だらけの東京証券取引所は、タイムリーに売買したい海外投資家から敬遠され、世界の主要市場で1日の最初に取引が始まるというアドバンテージを生かせず、地盤沈下が続いています。休場日数が減って利便性が増せば、海外投資家を呼び込むことができ、金融産業は発展することでしょう。

コロナ禍では、よく「ピンチはチャンス」と言われます。平常時には、慣れ親しんだ制度・仕組みを変えるということはなかなかできませんが、コロナのような非常事態なら、思い切って変えることができます。

Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは長く議論されてきたものの、なかなか実現しなかったこと(とくにⅠ)。コロナというピンチをチャンスと捉えて、思い切った改革に取り組みたいものです。

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