「産後うつ」女性の不安があまりにも危ないワケ 虐待や自殺も、子育てを支える仕組みが必要だ

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振り返ってみると、妊娠中に読みまくった妊娠・出産関連本には、授乳の仕方や沐浴の方法、おむつの替え方、産後の女性の体の回復などについては書かれていたが、この時期に母親が抱えやすい心の問題とその対策について、解説しているものはなかった。

初めての育児に不安を持たない人はいない。だが、その不安を解消していくための情報が、圧倒的に不足していた。

「例えば、『子どもは泣くもの』っていいますよね。頭ではわかっているんだけれど、気持ちが追いつかないんです。泣かれるたびに“もっと抱っこしろ”“手を抜くな、サボるな”って自分が責められている感じがして、“もうやめて!”って叫んでいました」

夫のサポートがなかったわけではない。むしろ妻の体調を気遣ってくれていた。だが、亀田さん自身が「これ以上、彼の仕事に支障が出てはいけない、迷惑はかけられない」と、つらい胸の内を打ち明けないようにしていた。

ギリギリだった彼女を救った自助グループ

亀田さんの心と体をむしばむ育児ストレス。やがて不安による抑うつと慢性的な睡眠不足、体力低下に、片頭痛や腰痛などの体の症状も出始める。目の焦点が合わなくなるといった、これまで経験したことのない症状にも見舞われた。固形物を受け付けず流動食をとるように。トイレに行く体力も奪われ、はっていったという。

もう頑張れない。気が狂いそう。わが子に手をかけてしまうかもしれない――。そんなギリギリの心理状態だった亀田さんを救ったのは、共通の問題や悩みを抱えた人が集まる自助グループだった。産後うつの背景に、自身が持つメンタルの問題があるのではないかと気づいて、自ら連絡をとった。何度か通ううちに気持ちが軽くなり、うつ状態が改善していったという。

亀田さんは当時を振り返り、こう訴える。

「育児は本当に大変。周りの人たちは子育て中の母親を応援してほしい。『大変だね、頑張っているね』って声をかけるだけでも、母親の気持ちは軽くなります」

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