「産後うつ」女性の不安があまりにも危ないワケ 虐待や自殺も、子育てを支える仕組みが必要だ

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「成長のスピードは赤ちゃんによって違うし、育児に正解はありません。だから、周りを気にすることはないと、そう何度も説明するのですが、結局、みんなと同じだと安心し、違うと不安になるからと譲らない。堂々巡りです。30年間、産婦人科医をしていますが、こういう傾向が出ていたのは最近のように思います」

これは、インターネットなどによる情報の氾濫と、ワンオペ育児の影響が大きいとみている。

「昔は、地域で子どもを育てていました。多くの人たちが子育てに関わっていたため、妊娠し母親となった女性は、そういう環境の中で子育ての多様性を学んでいった。それが難しい今は、母親がすべてを自分で解決しなければならない。そうなった場合、みんなと一緒というのが判断材料、安心材料になるのだと思います」

育児につまずいたときや行き詰まったときが危ない

問題は、育児につまずいたときや行き詰まったときだ。

育児の不安やストレスを吐き出せる相手がいたり、一時的にでも1人の時間を作れる環境があったりすれば、不安やストレスは軽減される。だが、それが難しいケースもある。厚生労働省の調査でも、10年前と比べて「子育ての悩みを相談できる人がいる」「子どもを預けられる人がいる」妊産婦は半分程度に減っている。

こうした子育ての孤立と負担感の増加を受け、国も支援に乗り出した。その1つが、2014年の「妊娠・出産包括支援モデル事業」として始まった産後ケア事業だ。これは専門家が母親の心と体のケアをしたり、相談に乗ったり、育児サポートなどを請け負ったりすることで、出産直後の母親を支え、子育て環境を整えるというもの。

事業を行うのは市区町村(自治体)。2017年度は392、2018年度は667の自治体で事業がスタート。2019年に「母子保健法の一部を改正する法律」が公布、産後ケア事業が法制化されたことで、市町村は子育て支援に努める義務が出てきた。

「これはつまり、子育て家族を支える仕組みができつつあるということ。気になる方は、ご自身の住む地域の市役所や保健センターなどに問い合わせてみましょう。サポートを受けたからといって、母親失格ではありません。むしろしっかりケアしてもらうことで望ましい母子関係が育まれ、それが次の母子関係にも引き継がれます。少しでもつらいと思ったら、専門家に相談することをお勧めします」(宗田さん)

鈴木 理香子 フリーライター

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すずき りかこ / Rikako Suzuki

TVの番組制作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆。今はホットヨガにはまり中。汗をかいて代謝がよくなったせいか、長年苦しんでいた花粉症が改善した(個人の見解です)。

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