厳しい時代をサバイバルするためのポエム
日本企業の入社式を研究している常見さんによれば、1996年に労働環境の大きな転換点があった。「会社に一生いられると思うな」「プロ意識を持て」といった訓示を大手企業各社の社長が入社式で述べ、日経新聞が「会社人間いらぬ ひるまず挑戦を」という見出しを載せた年だ。
「それまで終身雇用と年功序列が前提だった日本企業が初めて、『このままでは会社は立ち行かなくなるから、お前ら、自分で頑張れよ』と、入社初日に新入社員を突き放したのです」
90年代後半から就活も変わった。「リクナビ」や「マイナビ」など新卒向けの就職サイトが登場し、自己分析という手法が出てきて、「自分は何ができるのか、どうしたらいいのか」と、会社に入る前から自分の強みや志向を徹底的に考え抜かなければ、採用面接に対応できなくなった。常見さんら「ロスジェネ(ロストジェネレーション)世代」は社会に出るときに就職氷河期で、就活に苦労した人が大半である。
2000年に入ると、出版界にも異変が起きた。ビジネス書に自己啓発系が増えて、ビジネス誌はコミュニケーション力やプレゼンテーション、ロジカルシンキングなどスキルアップ系の特集を組むようになった。
「会社に頼れない時代を自力で生き抜くための武器を提供し始めたわけです。苦しい時代をサバイバルするために、そうした需要が生まれた」
仕事をゲーム化して楽しもうとする風潮も
そんな厳しい社会を孤独に戦っていかなくてはならないため、いっそ楽しもうという風潮も生まれてきた。仕事をゲーム化し、仲間と一緒に攻略していくのだ。
勉強会や読書会を開き、異業種交流会に参加し、会社以外の人脈を作って群れる。そうやって強くなろうとするのは、ゲームの「必殺技」を身に付けるようなものだと常見さんは分析する。
「ビジネス書やビジネス誌は、大人の『少年ジャンプ』なのです。『友情』『努力』『勝利』がテーマ。仲間とともに新しい技を次々と獲得していく。いったいどこまで強くなれば気が済むのか。『強さのインフレ』が起こっています」
サバイバルとゲーム、両方のベクトルがポエム化を促進しているのだ。
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