ポエムに踊らされる人は頭が悪いのか? ゆるふわだから巻き込める「あいまい性の合理性」

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人材募集もポエム

ベンチャー企業の求人広告も、ポエム化が激しいと常見さんは指摘する。「イノベーション」「リーディングカンパニー」「圧倒的成長」「次世代」といった言葉が頻出語。

ここでは、ネットベンチャー企業の求人広告を紹介することにしよう。クラウドソーシングの有望株で、週刊東洋経済4月5日号「激変!!東大生の就活」 において「成長ベンチャー32」としても紹介されたリアルワールドは、優秀なイマドキの若者を募集するために、本格的なポエムを活用している(以下に引用)。

ネットからリアルへ。
ネットがリアルを喰ってはいけない。
ネットが人を孤独にしてはいけない。
ネットがコミュニケーションを断ち切ってはいけない。
人に役立つはずのネットが人を消耗させてはならない。
(中略)
新しい時代の、新しいリアリティを創っていこう。
それがリアルワールドの
自分たちへの、そして社会的責任。 

 

「この広告に限らずですが、最近のベンチャー企業の求人広告は、具体的なようでいて具体的ではない。しかし、ベンチャー企業 というのは、まだ実績がなく、具体的な強みや魅力をアピールすることが難しい。どうしても、ゆるふわな言葉を盛るしかないのです」

もちろん、成長ベンチャーとして評価されているリアルワールドだ。イマドキの若者を採用するために、戦略的にコピーを考えた面もあるのだろう。実際、そうした言葉に魅力を感じる若者がいるということでもある。

「ベンチャー志向の若者には、意識が高くて思いは強いけれども、根拠のない表現に好奇心がふつふつと湧いてきてしまう人が、有名大学にもかなりいるのは事実です」

「元リクルートのトップ営業マン」もポエム

リクルートOBである常見さんは、「元リクルートのトップ営業マン」という肩書きもポエムの一種とみる。

「ベンチャー企業の求人広告の社長紹介ページで、『元リクルートのトップ営業マン』というフレーズを見かけますが、何か語っているようで何も語っていない。そんなこと、働き手にとっても顧客にとっても関係ないでしょ。

まあ、それなりにバリューがあるから一見、すごそうですけど、それをアピールするということは、ほかに売りがないということ。なんでそんな言葉に踊らされるんだろう? だいたい、自称『元リクルートのトップ営業マン』なんて、掃いて捨てるほどいますよ」

語気が荒くなるリクルートOBの常見さん。「ぜひこれを見てほしい」とパソコンを開き、映像を流した。YouTubeで約38万回再生されているCMだ(以下に引用)。


 

「すべての人生が、すばらしい。」
今日も走り続ける。誰だってランナーだ。時計は止められない。時間は一方向にしか流れない。後戻りできないマラソンコースだ。ライバルと競い合いながら、時の流れという一本道を僕らは走り続ける。より速く、一歩でも前に。その先に未来があると信じて。必ずゴールはあると信じて。人生は、マラソンだ。
でも、ほんとにそうか?
人生って、そういうものか?
違う。人生はマラソンじゃない! 誰が決めたコースなんだよ! 誰が決めたゴールなんだよ!
どこを走ったっていい。どこへ向かったっていい。自分だけの道があるんだ!
自分だけの道? そんなもん、あるのか?
わからない。僕らがまだ出合っていない世界は、とてつもなく広い!
そうだ、踏み出すんだ! 悩んで、悩んで、最後まで走り抜くんだ!
失敗してもいい。寄り道してもいい。誰かと比べなくていい。
道はひとつじゃない。ゴールはひとつじゃない。それは人間の数だけあるんだ。
すべての人生が、すばらしい。
誰だ、人生をマラソンと言ったのは。
リクルートポイントはじまる。

 

「私は最初、映像コンテンツとしては面白いと思い、熱くなりましたが、リクルートのCMだとわかってガックリしました。最後に『リクルートポイントはじまる』って……。『冷やし中華はじめました』みたいじゃないですか!(笑)」

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