北陸新幹線「2023年春開業」は無謀な計画だった 福井駅周辺は延伸開業目指して再開発が進む

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福井駅前には、今後の難局に向き合うヒントにも見えるキャッチコピーが掲出されていた。「新幹線さえ来ればなんとかなる。という発想、まず捨てます」。市が今年7月から本格化させたプロモーション企画「福いいネ!」のうたい文句だ。

福井駅西口の屋根付き広場に映し出された「福いいネ!」のキャッチフレーズ=2020年10月(筆者撮影)

企画のロゴは、越前ガニを象徴するという真っ赤な背景色に、親指に「福」と記したサムズアップのイラストが記されている。まさに、「新幹線さえ来れば」という意識や開業特需を当て込んだ、過去の多くの開業事例とは対照的な問題意識だ。「福井は弱い。押しが弱い。キャラが弱い」という自虐を織り交ぜながらも、新たな市民意識づくりへの決意も感じさせる。

「開業対策」は入り口

「首都圏などでの福井市の認知度はまだまだ低い。魅力、つまり『福』を、声を上げて発信してこなかった謙虚な市民の気質もある。認知度向上とイメージアップのため、集中的に、インパクトのあるプロモーションを行う必要があった」。市新幹線プロモーション課の梅木照美課長は狙いを語る。

「三角地帯」のビル群。突き当たりは福井駅西口=2020年10月(筆者撮影)

新幹線対策を中長期的にみると、「開業対策」は、いわば入り口にすぎない。これまでの事例をみると、一過性の観光客を当て込むだけでなく、まちづくりや地域づくりと連動した「真の新幹線対策」は、開業から2~3年後にその真価を発揮し始める。

そのような視点からみると、「新幹線さえ来ればなんとかなる。という発想、まず捨てます」という言葉は、延伸延期という苦境に、別の意味合いを帯びてくるようにみえる。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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