“臭い"再現で遅延防止、JR西のイノベーション

「外部の知見」取り入れ現場のお悩みを解決

テスターを嗅いでブレーキの臭いを確認する乗務員(写真:JR西日本)

列車が駅に到着してホームに降り立ったとき、何かが焦げたような「異臭」を感じることはないだろうか。これは車輪に「制輪子」(ブレーキシュー)と呼ぶ装置を押し当て、摩擦力で列車を停止させるときに発生する臭いで、たいていの場合は異常ではない。近年はモーターによる回生ブレーキを用いる車両が多いため、嗅ぐ機会が少なくなってきた。

だが、運転士がこの臭いを「車両の異常」と誤って判断すれば、列車の運行を止めて安全確認をすることになり、ダイヤに乱れが発生してしまう。JR西日本では実際に年1、2回は不要な列車抑止が発生しているという。このため同社では、乗務員への教育の現場でこの臭いを再現して嗅がせ、異常ではないことを周知している。

ブレーキ臭を再現した“香水”

この再現方法が独特だ。従来は実際に制輪子を削った粉末をフライパンで熱し、臭いを覚えさせていた。しかし、それぞれの乗務員の出勤時間が少しずつ異なることなどから、その都度作業していては手間がかかってしまう。

そのため、ブレーキの臭いを忠実に再現した香水のようなテスターを製作、すべての乗務員区所に配布することで効率化した。開発にあたっては「外部の知見」を取り入れた。テスターは大阪産業技術研究所が成分分析し、ベンチャー企業の「アロマビット」が再現性試験を実施した。本物の制輪子とテスターの比較検証で再現度の高さを確認したという。

こうした外部の知見を鉄道の現場に生かすため、同社には鉄道本部に「イノベーション本部オープンイノベーション室」が置かれている。井上正文担当課長はテスターを開発した狙いについて「現場では疑わしいときはちゃんと安全確認をしましょう、と教育しているので、より感度を高めてもらうことで乗務員の意識を向上させたい」と話す。

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