“臭い"再現で遅延防止、JR西のイノベーション 「外部の知見」取り入れ現場のお悩みを解決

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このように同社が外部の知見の取り込みに力を入れるのはなぜか。オープンイノベーション室の井上担当課長は「お客さまが求めているものが多様化する中で、旧来のサービスでいいのか、という問題がある。コストを抑えながら、幅広く展開できる方法を考えないといけない」と語る。五十嵐さんも「IoT、AIといった従来なかった概念が出てきて、できることが増え、MaaS(次世代移動サービス)や自動運転などの動きにも追随していかなくてはならない」と口をそろえる。

鉄道会社ではコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)によるオープンイノベーションの動きが活発だ。ただし、これは本業の鉄道以外に収益の柱を育てようという新規事業創出の性格が強い。

広がる外部企業との連携

そうしたなか、鉄道の現場でも外部の経験と知識、AIなどの最新技術を活用する例が見られるようになってきた。

ドローンを使った鉄道施設の点検(写真:JR九州)

例えばJR九州は、無人航空機(ドローン)事業を手がける「A.L.I.Technologies」と共同で鉄道施設の点検方法を開発。ソフトバンクなどとは、遠隔地から踏切設備の不具合を確認できるシステムの実証実験を実施する。

また、JR東日本は各社に先駆け、2016年に「技術革新中長期ビジョン」を策定。「グループ内外企業等との“つながり”を創出・強化し、イノベーションを起こしていく仕組み『イノベーション・エコシステム』を構築」することをビジョン実現の方策として挙げた。気象庁気象研究所との共同研究で、AIを使って精度を高めた突風探知手法を羽越本線の列車運転規制に導入している。

台風で新幹線車両に浸水被害が出るなど災害の激甚化が目立ち、駅ではホームドアの設置が当たり前のように求められる時代。人手不足の問題や新型コロナウイルスによる移動需要の減退が鉄道会社の経営に追い打ちをかけている。安全を理由に何かと機密が多かった鉄道の現場も、自前主義では急速な環境変化への対応が難しくなってきた。オープンイノベーションの積極活用は、ベンチャー企業などのビジネスチャンスとなるだけでなく、鉄道会社にとってのメリットも大きい。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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