10月末、小松―敦賀間の延伸区間を一回りした際には、「各地で業者が集まらない」「いくつかの駅で工事が遅れている」「敦賀までの延伸を先送りし、財源や業者を福井駅までの区間に集中的に投下して、2023年春の福井開業を目指す方針なのでは」といった証言や観測が耳に入ってきた。
これらの経緯を振り返ると、延伸延期は想定されたシナリオではあった。今回の報告を、意外なほど冷静に受け止めているように見える地元関係者もいた。とはいえ、1年半という遅れと2880億円もの予算の増加は、延伸へのシナリオを大きく、複雑に変える。JR、地元双方の開業準備に加えて、発足済みの福井県並行在来線準備会社の経営や社員教育、各駅の周辺整備事業、2次交通の再編など、多様な影響が懸念される。
金沢―敦賀間はもともと、「2026年春ごろ」が開業目標とされていた。それが2015年1月、現在の「2023年春」に前倒しされた経緯がある。結果としての3年前倒しが、そもそも厳しい目標だったという指摘もある。
地価が4年連続で上昇
福井駅周辺の再開発事業は、駅から西へ延びるメインストリート・中央大通りの南側一帯が主な舞台だ。
核となるのは、中央大通りと、1本南の福井駅前電車通りに挟まれた、通称「三角地帯」。市民に親しまれてきた、昭和の趣を残すビル群が、27階建て・高さ120mの「コートヤード・バイ・マリオット福井」や28階建て・100mのマンションに生まれ変わる。10月には、区画内を走る市道を廃止し、ビル群の解体工事が始まった。「駅前の顔」だった景観がフェンスに囲まれ、騒音の中で少しずつ姿を消していく光景は、新幹線時代の胎動を感じさせた。
市都市整備課の福岡敏成課長補佐は「再開発事業だけでなく、複数の民間のオフィスビルの建て替えも進んでいる。駅周辺の公示地価は4年連続で上昇しており、新幹線開業の期待感がデータに表れている」と話していた。駅周辺の歩行者通行量や観光案内所の利用者数が増加するなど、福井駅一帯の整備の効果が表われ始めていたという。
その一方で、「コロナ禍に加えて、再開発区域内の飲食店や店舗が閉店してしまうと、市民の足が中心市街地から遠のいてしまわないか」と不安ものぞかせていた。
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