解決に大きな前進、新幹線「青函トンネル問題」 独自取材で判明した「貨物列車との共存策」

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青函トンネル内を駆け抜ける新幹線(記者撮影)

2030年度末の北海道新幹線札幌延伸後、北海道と本州を結ぶ青函トンネル内における新幹線の高速走行と貨物列車の走行を両立させる方法について国土交通省が検討を進めているが、その最新状況が編集部の取材で明らかになった。

青函トンネルとその前後の区間(青函共用区間)82kmは新幹線と在来線の両方が走行する。在来線はごくたまにJR東日本の「トランスイート四季島」などが走ることもあるが、大半はJR貨物の貨物列車である。

東北新幹線の最高速度は時速320kmで、盛岡以北は時速260kmと定められているが、貨物列車の最高時速は110km。青函トンネル内を新幹線が時速260kmで走れば前方の貨物列車に追いついてしまう可能性がある。高速走行する新幹線が貨物列車とすれ違う際に、風圧で貨物列車のコンテナが変形するリスクも指摘されている。このため、青函トンネルにおける新幹線の最高速度は時速160kmに抑えられている。

時間を区切ってスピードアップ

この状態で北海道新幹線が札幌まで延伸した場合、新幹線での東京―札幌間の所要時間は5時間近くかかる。航空機の羽田―新千歳線からの大幅な利用者シフトは見込めない。

国交省は盛岡以北における新幹線の最高速度引き上げを検討している。そして、青函共用区間における新幹線の速度引き上げも検討課題の1つだ。

当面の解決策は、新幹線と貨物列車の走行時間帯を分けて貨物列車が走らない時間帯に新幹線が高速走行する「時間帯区分案」の実施だ。2019年9月4日から10月21日にかけて青函トンネル内で新幹線が時速200km以上で走行してレールや風圧の影響を確認する試験が実施された。その分析結果を受けて2020年度から時間帯を区切って時速210kmでの走行が実施される見通しだ。

といっても、新幹線が高速走行するのは、旅客需要が多く貨物需要が少ない時期、つまり年末年始やお盆、ゴールデンウィークなど特定の時期で、しかも特定の時間帯のみに限られる。

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