解決に大きな前進、新幹線「青函トンネル問題」 独自取材で判明した「貨物列車との共存策」

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並行在来線にはJR貨物の存在が密接に絡む。自らの線路をほとんど持たないJR貨物は、線路を保有するJR各社などの鉄道会社に線路使用料を支払っている。

JR貨物がJR旅客各社に支払う線路使用料は「アボイダブルコスト」と呼ばれる、磨耗によるレール交換費用など限定的な項目にとどまっているが、並行在来線会社に対しては貨物列車の走行の実態に応じた使用料を支払っている。この水準はアボイダブルコストよりもずっと高い。しかし、この負担増分は鉄道建設・運輸施設整備支援機構が「貨物調整金」としてJR貨物に補填しているため、JR貨物の懐が痛むことはない。

並行在来線を引き継いだ鉄道会社の中には、JR貨物から得られる線路使用料が収入の多くを占める会社もある。例えば、北陸新幹線金沢延伸に伴い発足したえちごトキめき鉄道では、営業収入に占める線路使用料の割合は65%に達する。

JR貨物が自ら運行することになれば…

新幹線の札幌延伸後は、函館―長万部―小樽間が並行在来線として切り離される見通しだ。しかし、道や地元自治体が並行在来線を引き継ぐことについて消極的だという声も聞かれる。

函館―長万部間の利用者はそれなりに多いものの、大半は函館と苫小牧、札幌などの都市間利用者。沿線住民による日常的な近距離利用は決して多くない。沿線主要駅の1日の乗車人員は、函館、五稜郭、新函館北斗を除けば、森駅が190人、八雲駅が223人、長万部駅が184人といった状況だ。

もし、並行在来線として引き継がれないと、JR貨物が自ら線路を保有するしかない。その場合は線路の維持管理費でJR貨物の利益が吹っ飛びかねない。JR北海道は石北線や根室線などの一部の区間についても「当社単独では維持することが困難」としている。JR貨物の将来はJR北海道の動向抜きには語れない。青函トンネルの問題だけを考えればよいという状況ではもはやなくなっているのだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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