解決に大きな前進、新幹線「青函トンネル問題」 独自取材で判明した「貨物列車との共存策」
さらに、高速走行時間帯を午前4時間、午後3時間の計7時間程度とした場合は、高速新幹線が14本、貨物列車は40本強が走行可能だ。おそらく、JR北海道とJR貨物がお互いに歩み寄ってダイヤを調整すれば、より最適なダイヤが作れるはずだ。
ダイヤの工夫で新幹線の高速走行と在来線貨物列車の共用問題が解決するなら、なぜ最初からこの方向で検討を始めなかったのだろうか。この理由について、関係者の1人は「技術の開発で新幹線の高速走行を実現するというのが前提条件だったからだ」と明かす。
2012年7月にスタートした国の整備新幹線小委員会の下部組織である青函共用走行区間技術検討ワーキンググループでは、短期的方策と中長期的方策の2段階に分けて議論を進めた。短期的方策とは特定の時期の特定の時間帯のみ新幹線を高速させる案である。中長期的方策において貨物新幹線をはじめとした技術開発や船舶案が検討されたものの、ダイヤの検討は行われなかった。この時点で札幌延伸まで約18年あった。それだけの時間があれば新たな技術を生み出して問題を解決できるという自信があったのだろう。だが、それが過信に過ぎなかったことは、いまだに技術的な解決策が見い出せていないことからも明らかだ。
青函問題より深刻「並行在来線問題」
今回のダイヤ案は新幹線が全時間帯で高速走行するわけではないので、抜本的な解決とはいえないが、あと10年に迫った札幌開業に向け、一歩前進したといえる。
むしろ、青函トンネルを高速新幹線と在来線貨物列車の両方が走行するという前提に立って、新幹線の需要が高い時期は新幹線優先のダイヤ、貨物需要が高い時期は貨物優先のダイヤにするなど、JR北海道とJR貨物が協力し合うようになれば、青函トンネルの生産性は現在よりも高まるはずだ。
ただ、JR貨物にとっては、北海道新幹線札幌延伸時にはより深刻な問題が控えている。並行在来線問題である。
新幹線開業後、新幹線と並行して走る在来線と新幹線の両方は維持できないとJRが判断した場合に在来線を経営から分離することを国が認めている。
北海道新幹線の新青森―新函館北斗間が開業された際、JR北海道は函館本線の木古内―五稜郭間を並行在来線として経営から切り離した。道や地元自治体などの出資で発足した第3セクターの道南いさりび鉄道が、木古内―五稜郭間の運行を引き継いだ。
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