解決に大きな前進、新幹線「青函トンネル問題」 独自取材で判明した「貨物列車との共存策」
札幌延伸を見据えて、国土交通省は抜本的解決策の検討も進めている。2019年10月28日付記事(「新幹線優先?密室で『青函貨物廃止』案を議論中」)でも触れたとおり、これまで、貨物新幹線の開発や、鉄道貨物を廃止して船舶での輸送に切り替えるといった案が水面下で議論されてきた。いずれの案も青函トンネル内は新幹線だけが走るという点で、確かに抜本的な案である。
しかし、貨物新幹線の開発には多額のコストがかかり、2030年度の北海道新幹線札幌延伸に間に合うかどうかも未知数だ。そこで、国交省は船舶案について本格的な検討を始めたが、鉄道による効率的な物流体系を損なうとしてホクレンなどの大口荷主が猛反対し、船舶案は消えた。
貨物と新幹線「2つの単線」案
議論は振り出しに戻り、青函トンネル内に在来線貨物列車も走るという前提で仕切り直しになった。
では、在来線貨物列車の走行と新幹線の高速走行を両立させる方法はあるのか。2019年秋ごろに関係者間で有力案とされたのが、青函共用区間の上り線と下り線を新幹線と貨物列車がそれぞれ単線の専用線として活用する案だ。
これなら、新幹線が高速走行しても貨物列車に追いつく心配はない。新幹線と貨物列車がすれ違わないダイヤを作って風圧リスクを抑えることも可能だという。
ただ、単線の新幹線規格は国内では前例がない。長崎新幹線・新鳥栖─武雄温泉間でも単線案がアイデアの一つとして検討されているが、JR九州の青柳俊彦社長は、「複線と比較すると時間短縮、輸送力確保、ダイヤの安定性などで課題がある」として、単線案に懸念を示す。単線の場合は上り列車と下り列車が同じ線路を使うため、上りでダイヤが乱れると、下りにも波及しかねず、いつまでたっても遅れが解消しない心配があるからだ。
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