キリギリスは思考の自由度が高い 「固定次元」のアリから「可変次元」のキリギリスへ

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対してキリギリスはまったく別のアプローチを取る。「数字の比較」の勝負に持ち込まないようにするのである。「数字で比較できる」ということは、相手と同じ変数(◯◯速度等)の優劣で勝負しようとしていることを意味する。そうではなくて、キリギリスはそもそも比較表を作ったときに、相手がその欄を埋められないような「変数そのもの」を考え出そうとするのである。

ここでのポイントは、単に従来あるものと似たような機能を増減させるのではなく、抜本的な機能を増減させるということである。

他社製品に「あって当たり前」の機能をあえてなくしてしまうという意味で「変数を減らす」というオプションも、キリギリスにはありうる(古くは「ウォークマン」がこの典型的なパターンであり、近年では新興国向け製品やサービスの開発にもよく取られる手法である)。

キリギリスが究極的にやりたいのは、あまりに変数が他社の製品と懸け離れているために、「比較表を作ることに意味がない」あるいは「比較表が原型をとどめない」という状態にもっていくことである。たとえばタブレットPCが誕生したときに、ノートPCとの「比較表」を作ることに意味を感じる人がどれだけいただろうか。

要するに、同じ土俵で「いかにうまく戦うか」を考えるのがアリで、完全に土俵を変えてしまって「いかに戦わないか」を考えるのがキリギリスと言える。

これらは、イノベーションのレベルの違いで言うと、アリのイノベーションが連続的な漸進的(インクリメンタル)イノベーションと呼ばれ、キリギリスのイノベーションが不連続な破壊的イノベーションと呼ばれる。

次ページ「上位概念」で考えることができるキリギリス
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