「高齢LGBT」を悩ませる、これだけの不安要素 「同性パートナーシップ制度」普及でも残る課題

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同性パートナーを異性の婚姻と同等の関係と認め、自治体が独自の証明書を発行するパートナーシップ証明制度。2015年に渋谷区と世田谷区が導入して以降、全国に広がり、2020年10月時点で60カ所の自治体が導入している。

性的マイノリティの職場環境改善のための講演活動や、パートナーシップ証明制度の実態調査などを行うNPO法人「虹色ダイバーシティ」代表の村木真紀さんは、「(パートナーシップ証明制度の)導入自治体数や実際に宣誓をした人の数以上に、社会にとってのインパクトが大きい」と制度の必要性を語る。

制度ができればマスメディアでニュースとして取り上げられ、これまであまり関心がなかった人にも認識が広がる。また、導入と同時に自治体に性的マイノリティの相談窓口ができることも多く、当事者や家族、職場の人なども相談できる先が生まれる。

消えない同性カップルの不安

一方で、当事者の不平等や不安が解消されたとは言えない。とくに将来的な不安要素になるのが、お金や住まい、医療などの生活に直結する問題だ。

例えば、パートナーシップ証明制度には原則として法的な効力がないため、所得税や相続税の配偶者控除が受けられない。また、差別的な気持ちから同性カップルの入居を断る不動産会社や大家もいる。

千葉市ではカードサイズの証明証を発行しており、常に携帯できる(一部を加工、記者撮影)

医療に関しては、診察室への同席や本人の意思決定ができない場合の代理を親族や配偶者のみに限り、同性パートナーを排除する医療者や病院もある。最愛の人の死に目に立ち会えないこともありうる。

伊藤さんの場合、簗瀬さんを扶養するような形になっているが、戸籍上の配偶者ではないため、所得税の控除は受けていない。千葉市が同性パートナーであるという理由で医療の立ち会いや住宅の入居を拒否することないよう、地域の医師会や宅地建物取引業協会に要請するなどしており、住まいや医療に関する千葉市の対応を評価している。

ただし、こうした対応をするかどうかは自治体次第だ。千葉市で取得した証明書を他の自治体で使うことはできない。もし、伊藤さんが千葉市外で体調を崩し、病院に運ばれたら、簗瀬さんは一緒に診察室に入ったり、入退院などの事務手続きを代わりに行えない可能性がある。2人には子どもはおらず、両親や親戚はほとんど亡くなっている。頼れる相手はお互いだけだ。

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