「リアリティーショー」が世界で流行する必然 恋愛系、オーディション系が大人気

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リアリティショーはドラマよりも予算規模が低く、一度ヒットすれば10年以上にわたってロングヒットするケースが多々見られる。またエピソード数の多さから、視聴習慣の定着にも一役買う。このリアリティショーの持つ効果に動画配信も目を向け、数を増やしているというわけだ。

NetflixはドイツのヒットメーカーRed Arrowスタジオ傘下のクリエイティブチーム「Kinetic Content」がNetflixオリジナルとして制作したデートリアリティショー「Love is Blind」で成功事例を作り出した。

このほかにもロサンゼルスに拠点を置くインド系プロダクション「Smriti Mundhra」が制作したインド婚活リアリティショー「Indian Matchmaking」や、イギリス最大手スタジオのフリーマントル傘下のクリエイティブチーム「Talkback」が制作した「ザ・ジレンマ:もうガマンできない?! (Too Hot to Handle)」も人気を集めている。

だが、爆発的なヒット作はまだ出ていない。次なるヒットを目指して、ゲームや歌のオリジナル・リアリティショーの開発に力を入れていることを明かしている。

恋愛リアリティーショーの自殺問題は海外でも

日本で今、リアリティショーに目が向けられているのは、遺憾ながら番組出演者の自殺が相次いだことによるものが大きい。

海外でも先の「ラブ・アイランド」を始め、特に恋愛リアリティショーで出演者の自殺問題が起きている。問題視される一方で、世界の番組市場では変わらぬ勢いで取り引きされている。リアリティショーが市場トレンドであり続けているのも事実なのである。

2020年は新型コロナウイルスが世界中でパンデミックを引き起こし、生活様式に変化をもたらした。時代の空気を汲み取る番組がいつの時代もヒットしているように、今の世の中に呼応したヒット作が恋愛リアリティショーからさらに生まれる可能性があると言われてもいるところだ。

前出・ITVスタジオのMaarten Meijsは「ソーシャルディスタンス時代は、人と人との接触への欲求がこれまで以上に高くなっている」と話し、これが「ラブ・アイランド」などの恋愛リアリティショーのヒットを促している理由にあると考える。

また世界に販路を持つトルコ最大手のディストリビューターである「Inter Medya」の創設者でありCEOのCan Okanも恋愛リアリティショーの肯定派だ。

世界中で普及している出会い系アプリに目を向け、「スマホのアプリを介して交流しデートをするように、バーチャルなデートやイベントはすでにわれわれの生活に浸透している。これらのアプリからインスピレーションを得て、新しい現代的な恋愛リアリティショーのフォーマットを生み出すことができるのではないか」と、今後の動きを予測する。

恋愛でも歌でも、どのようなテーマにおいてもリアリティショーは、出演者がふと発した言葉や感情が揺れ動いた行動を見逃さず、その映し出した姿に共感力を植え付けていく。その普遍性が世界中で視聴者を獲得している理由にもある。それを追求した番組から世界ヒットが生まれていく流れは、この先も変わらず続いていくだろう。

近年は貧困、経済格差、環境問題、ジェンダー格差など社会問題に切り込んだものも番組市場で注目を集めている。時代が求めるものに敏感に対応したリアリティショーであることもまた、ヒットの条件である。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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