元ベンチャー起業家が「株式会社の謎」に迫る訳

「自分を勘定に入れて」500年の歴史を素描する

500年の歴史を持つ「株式会社」制度。なぜ、このような制度が生まれ、現在まで続いているのか。事業家でもある平川克美氏の来歴と生き様を追いながら探る(写真:yongyuan/iStock)
東インド会社を起源とする500年の歴史を持つ「株式会社」制度。なぜ、このような制度が生まれ、現在まで続いているのか。その謎に迫った『株式会社の世界史:「病理」と「戦争」の500年』がこのほど上梓された。
実際にいくつもの会社を起業し、経営し、そして畳んできた事業家でもある同書の著者・平川克美氏は、どのようにその謎を読み解いていったのか。
同氏の来歴と生き様から探っていく。

「自明」の制度を論じる困難さ

平川克美氏は、素描の人だと思う。

『株式会社の世界史:「病理」と「戦争」の500年』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

素描とは、対象の観察から始まり、その全体像を線によってつかんでいく、デッサンと呼ばれる技法である。

描き手は、いちどきにさまざまな角度から素描する。何度も対象を観察し、自分の視覚と素描が肉薄する地点まで描き続ける。

ところで素描には、写真のような素描もあれば、ある部分を強調したり、変形させたり、あるいは抽象化する技法もある。単純化する場合もある。

この本における対象、すなわち、株式会社に対して、世の多くの人や論考は単純化の技法を取るだろうと思う。

なぜなら、この対象は、500年という時間を生き続け、その生きる原理が崩れてもなお生きながらえようとしている、人の手には余る妖怪のような存在だからだ。

しかも、人々の生活や価値観が、ほぼ株式会社を中心としたものに差し変わっている今、自身に内面化したこの対象を、人は容易に捉えることはできない。

そこで人々は「道筋の見えないところでは、期待と欲望が先行するのである」と本書にも書かれているように、この対象についての漠とした不安の中にあるからこそ、逆に希望を抱こうとする。人はつねに「回想の次元」ではなく、「期待値の次元」(鶴見俊輔)に立つのである。そうして、単純化した株式会社に対するあやふやな期待値を根拠に、株式会社ありきの経済理論が跋扈(ばっこ)する。

次ページ複雑なままに描いている平川氏
マーケットの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • iPhoneの裏技
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • 「非会社員」の知られざる稼ぎ方
  • 岐路に立つ日本の財政
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
人望のない人は「たった一言」が添えられない
人望のない人は「たった一言」が添えられない
都心vs. 郊外 家を購入するならどっち?
都心vs. 郊外 家を購入するならどっち?
30~40代でも起こりうる『孤独死』の過酷な実態
30~40代でも起こりうる『孤独死』の過酷な実態
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
漂流する東芝<br>舵取りなき12万人の悲運

再出発したはずの東芝の漂流が止まりません。再建請負人の車谷暢昭社長が電撃辞任。緊張感が増すファンドとの攻防や成長戦略の構築など課題は山積しています。従業員12万人を超える巨艦企業はどこに向かうのでしょうか。

東洋経済education×ICT