投資家は「上海総合指数」を重視してはいけない 中国の株式市場の実態を知らないと損をする

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上海総合指数は中国企業の成長力を表していない?(写真:Featurechina/アフロ)

いつから始まったのか定かではないが、日経平均株価が上海総合指数の影響を受けるようになった。とりわけ、株価が大きく下がった際、「今日は上海株下落の影響を受けましたね」などと真剣な表情で語る市場関係者が少なくない。

一方で、春節明け(2月11日以降)に上海株が急速に上昇し始めたときは、東京市場でその影響がほとんど無視された。これはどう考えてもおかしい。また時差の関係で東京市場は前場では前日のニューヨーク市場の影響を受け、後場にさしかかると、今度は上海市場の動きに一喜一憂するなどしており、日本独自の材料はほとんどない状況だ。

しかし、もし東京市場がアメリカ株と中国株の影響を強く受ける受け身の市場であれば、ファンドマネジャーやストラテジストといった市場関係者の存在価値はなくなり、資産運用をAIに任せればよくなってしまう。アメリカの株式市場についての論評は、筆者は専門家ではなくプロに任せるが、「日本株が上海株の影響を受けている」という指摘については異議を唱えたい。

中国の株式市場では、当たり前の常識が通用しない

確かに、グローバル化とIT化が定着し情報が瞬時に拡散されるようになったことに伴い、異なる市場でもお互いの値動きの影響をより受けやすくなっているのは事実だ。とりわけ、日本と中国については、時差が少ないうえ、ヒト・モノ・カネのつながりも日増しに強まっている。そのため中国経済や株式市場の動向に神経をとがらせるのは当然のことだ。

株式市場が実体経済の鏡と言われるとおり、経済の好不調、あるいは政治や社会に異変が起きているかどうかを知るうえで、株価の動向は絶好のバロメーターといえよう。

しかし、中国の株式市場ではこの当たり前の常識が通用しないかもしれない。1990年に上海や深圳証券取引所が発足した時から、筆者は中国の証券市場の歩みを見てきた生き証人と言っても過言ではないが、実体経済と株式市場の乖離について嫌になるほど体験してきた。

次ページなぜ実体経済と株式市場で「乖離」が生じる?
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