夢の「2拠点生活」こんなはずじゃなかった実態 都会と田舎を行き来する生活の盲点と落とし穴
若者世代が「デュアラー(2拠点生活者)」として動き始めているのは、田舎での過疎化の進展から空き家が増えて100万円から数百万円の安価で売り出され、縁さえあれば、ただでも住んでほしいと古民家を譲渡してもらえる場合もあるという背景がある。
だが、首都圏から比較的近く、景色や自然災害に対するリスクなどを総合的に判断して、「住みたい」と思えるような物件は、軽く1000万円を超えてしまう。格安物件は、地方で交通の便の悪い僻地にあることがほとんどだ。
もちろん、神奈川の自宅から2時間半程度で、条件に近い格安物件がなかったわけではない。いろいろな人や不動産業者にお世話になったものの最終的には購入に至らず、縁がなかったというほかない。結果的に、知人が住んでいた三重県の山奥の集落に、2拠点目を構えることになった。
高速を使っても片道6時間かかる
神奈川県の自宅から高速道路を使っても6時間近くかかり、費用も高速代やガソリン代で往復2万円近く必要である。当初思い描いていたような、2拠点を月に2回程度は行き来する生活は難しいのではないかと実感している。体力的にも時間的にもほぼ1日を移動で費やすことになり、費用もかさむことから簡単には行き来できない。快適な2拠点生活のためには、移動時間を3時間程度には抑えたいところだ。
こうした負担に加えて、コロナ禍の今、三重県の山奥での生活の方が何倍も快適で楽しくもあり、神奈川の自宅は十分に管理できずに老朽化が進んでいるため、手放すことを考え始めているのが実情だ。
コストという観点からは、住んでいない拠点であっても冷蔵庫を動かすための電気代や固定資産税などの固定費が発生する。さらに、ちょっとした作業をしたり、趣味のための道具を探したりすると、2つ目の拠点に持って行ってしまって、探し回った挙句に見つからずに途方に暮れることが何度かあった。
2つの拠点を維持するためには、生活必需品や道具類、趣味用品など所有する物が増えかねないことも覚悟しなければならないだろう。拠点が増えれば、事務的な手続きなどが煩雑になることもデメリットとして考えられる。
場所に縛られずに、より自由に生きようと願う2拠点生活は、「ミニマリスト」的な価値観に逆向する形でモノや事務作業が増えてしまい、かえってモノや雑事に縛られてしまうおそれがある。
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