夢の「2拠点生活」こんなはずじゃなかった実態 都会と田舎を行き来する生活の盲点と落とし穴

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都会では隣近所に気を使って庭でバーベキューをするのもままならないが、田舎では思う存分、肉や魚を焼いて煙を出しても苦情を言われるようなことはない。古民家を修復したりするDIYや、山菜採り、キノコ採りも、田舎暮らしでは日常生活の中に組み込まれている。趣味と生活が一体化している暮らしであり、わざわざ費用を掛けて余暇を過ごすことはほぼなくなった。

東京や長野など3カ所に拠点を持つ70代の男性は、「複数の生活拠点を持つことで気持ちに余裕ができる。日本は気候が厳しい面もあり、夏には涼しい長野で過ごしたりするなど生活を快適に保つことも可能だ」と話す。

「ずっと同じところに居ると変に順応してしまい、小さくまとまってしまう。複数の拠点を移動することで、色々な変化や経験を積むことになり、ボケることもないだろう。日本は国土の面積でいえば小さい方で、もっと金銭的な余裕があれば、ベトナムをはじめとしたアジアやロシアなど海外にも拠点がほしいぐらいだ」

この男性は、DIYや家庭菜園を趣味にしており、複数の拠点を持っていても、それほど費用はかからないという。東京では大都会ならではの刺激(芸術などの文化活動やレストランめぐりなどなど)があり、田舎では都会のマンションではできないDIYや農作業を思う存分楽しめるメリットがある。

2拠点生活だからこそ持てる人脈も

複数の拠点を持つことで人脈が広がることも利点の1つだろう。筆者の場合、都会での人脈に加えて、薬草や山菜の大家、在来種を育てて自給自足生活を送る「種取りユーチューバー」、炭焼き職人など、土地に根ざして生きる人たちと親交を深められるようになったことが、田舎で本格的な生活を始めたうえでの大きな財産となっている。

中東で10年暮らした筆者の場合、年に2〜3カ月は中東で過ごしたいと思っているし、昨年は3カ月近くを中東諸国で滞在した。ゲストハウスや友人宅を泊まり歩けば、日本で暮らすよりも生活費は安い。気持ち的には中東が「第3の拠点」という位置付けである。

コロナによって2拠点生活や国内外への旅行が制限されて、本格的な移住となった田舎での生活を満喫しているが、複数の拠点を気ままに行き来する魅力も捨てがたいというのが正直なところだ。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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