夢の「2拠点生活」こんなはずじゃなかった実態 都会と田舎を行き来する生活の盲点と落とし穴
このため、緊急事態宣言が解除されて3カ月ぶりに一時的に戻った神奈川の自宅の荒廃ぶりにろうばいした。庭はジャングルようになって雑草や伸び放題になった野菜が通り道をふさぎ、積み上げてあった薪も倒壊して玄関への侵入を阻んでいた。郵便受けは、近所の人に何度か見てもらうよう頼んでいたものの、ポスティングによるチラシや郵便物で埋まっていた。
戸建ての自宅が老朽化していることも事態の悪化に拍車を掛けた。これがマンションだったら、少しは状況が違ったかもしれない。換気や掃除をしなかったことによるカビ臭やゴキブリの糞、ホコリが積もった床を前に、うろたえた。庭の樹木が張り出すなど近所の方にも迷惑がかかっていたようだ。
すぐ帰ると思って冷蔵庫に入れっぱなしだった食料は、カビの培養実験さながらの繁殖ぶり。腐ったものをより分けて食べられるものを探しだす始末だった。腐敗臭がしばらく冷蔵庫から抜けず、辟易したことを覚えている。
防犯対策や維持管理の負担も
幸いだったのは、泥棒が入ったのではないかとの騒動が杞憂に終わったことだ。三重の自宅にいた際、神奈川の自宅は水道を止めておいたはずなのだが、なぜか水道メーターの検針で不在期間中に4立法メートルの水が使用された形跡があると水道局から電話がかかってきた。隣近所や親戚、友人らが庭掃除で水道を使用した可能性も考えて、思い浮かんだ人たちに聞いてみたものの、いずれも心当たりはないという返事だった。
泥棒が侵入して風呂やシャワーでも浴びたのかと、よからぬ思考をめぐらせたが、戻った神奈川の自宅に泥棒や不審者が侵入した形跡はなかった。ただ、4立法メートルの水を誰が使ったのか、何らかの手違いだったのかは、依然として謎のまま残っている。2拠点生活は、1つの拠点が留守になる期間も長くなり、防犯対策が必要になる場合もありそうだ。
久しぶりに戻った家では、庭や室内の掃除、家屋の修繕などに追われる羽目にもなった。コロナ禍では、友人や知人との接触、食事会などのイベント開催、電車に乗っての外出もしにくく、単に家の掃除や維持管理のためだけの帰宅となった。コロナが収束すれば、こうした状況も変わるだろうが、今の段階では2拠点生活を営むというのは、「負の遺産」を抱えているのに等しい状況だ。
神奈川の家から三重に戻った際には、コロナウイルスの感染源になる可能性も考慮して14日間の自主隔離に入ったが、回覧板が回っていこないなど、集落内の雰囲気で実質的には「強制隔離」のような状態で、気が滅入ったのを覚えている。
移動の費用もばかにならない。コロナ騒動が拡大する前は、物件購入のための手続きや引越し荷物の移動で神奈川と三重を頻繁に行き来した。当初、神奈川の自宅から2時間半程度の場所で2拠点目を探し始めたものの、この程度の距離にある物件は、予想以上に値が張ることを実感した。
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