プール方式は中国だけでなく、アメリカ・ニューヨーク州なども採用している検査方法で、その実効性はすでに確立されている。とくに検査リソースに乏しい地域では有用で、10月21日はルワンダの研究チームがイギリスの科学誌『ネイチャー』の「コロナを特定するためのプールされた検査戦略」という論文を発表したくらいだ。
もし、日本国内で「科学的知見が確立されていない」のなら、早急に国立感染症研究所で検討しなければならないだろう。厚生労働省による世田谷区への回答には疑問が残る。
厚労省の問題は、これだけではない。医系技官のトップで、コロナ対策を主導してきた鈴木康裕・前医務技監は、10月24日付の毎日新聞のインタビューで「前提としてPCR検査がどういうものか考える必要はある。陽性と結果が出たからといって、本当に感染しているかを意味しない。ウイルスの死骸が残って、それに反応する場合もある」とコメントしている。
これは、従来からの医系技官が主張してきた「PCRは偽陽性を生じやすい」という論を繰り返したものだ。彼らは偽陽性のリスクは1%と主張してきた。
民間検査会社や大学を活用しない不思議
この医系技官の主張は、国内外のコロナ研究の成果と矛盾する。例えば、青島では、764万6353人の検査結果が判明し、誰も陽性者がいない。もし、1%も偽陽性を呈するなら、7万人以上の感染者が存在しているはずだ。
また、現在、世界各地で大量のPCR検査が実施されているが、偽陽性が大問題となっている国や地域はない。「PCRの偽陽性は1%」という仮説には明確な疑念がある。医系技官は早急に訂正したほうがいいと私は思うが、彼らには、そのつもりはなさそうだ。
なぜ、医系技官はPCR検査に後ろ向きなのだろうか。鈴木氏のインタビューでの発言が興味深い。彼は「保健所のキャパシティーが大きかった」と述べている。
日本がPCR検査体制を強化しなければならないことは、議論の余地がない。日本には保健所以外にPCR検査が実施できる施設は数多く存在する。民間検査会社や大学等だ。なぜ、医系技官は、このようなリソースを使わなかったのだろうか。本稿では詳述しないが、厚労省・感染研・保健所の独占体制が壊れるのを恐れたからだと推測する。これは利権が絡んでいると私は見ている。
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