レディースデーは男性差別?
少し傍論から行きましょう。同じ文脈でよく語られるのが、映画などのレディースデーは、男性に対する差別ではないか、というものです。これは単なるマーケティングの問題として解釈できます。つまり潜在的に掘り起こせていない需要を、特定の属性をキーワードにして、商品購入に結び付ける戦略です。
毎年行くスキー場で、50歳からは平日シニア1日券の対象になり、今年はちょっと得をしました。シニアはそんなに滑らないだろうし、需要を平日に移して喚起する意味がある、というのが経営側の戦略であることは、誰にでもわかることでしょう。私はけっこうガンガン滑るほうなので、少し安くなった気がしました。これは若年者差別ですか?
美容院は一般的には女性が多く、男性の利用者はあまり多くありません。大学のそばにある美容院で、男性のカットを女性よりも安く設定してあるところがあります。これも理屈は単純です。若い男性が何千人といるキャンパスに近接しているのですから、男性の顧客を取り入れようとするのは当然の戦略でしょう。これが女性差別ですか?
これらはいずれも特定層の需要を掘り起こすための戦略です。もちろんそこで、「外国人お断り」とやれば、人種差別でしょうし、社会的に弱い立場に立つ人たちに、余計な負担を強いるものだとすれば、社会的に問題にすべきことでしょう。ですが、上記の事例は、いずれもマーケットにとっての少数者を誘引して、市場を拡大する作戦なので、問題ではないと考えられます。
日本の性犯罪の現況
女性専用車両が問題でした。話をそこに戻す前に、日本の性犯罪の現況について少し確認しておきましょう。日本の強姦の認知件数は、2012年に1240件。もちろんこれは、あくまで警察が把握した件数です。
強姦は親告罪といって、被害者が立件を要求しない場合、件数にはカウントされません。したがって、認知件数と実際の発生件数との乖離がつねに指摘されています。
ただそれでも、1964年に戦後最高の6857件を記録し、最近のピークでは2003年に2472件だったものが、10年ほどで半分に減ったとすれば、実際の発生件数も減ったと考えるのが妥当ではないでしょうか。2003年と比べて、泣き寝入りをする人が2倍以上になったと考えるのは、どう考えても無理があるはずです。
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