JR東と「205系」が支えたジャカルタ鉄道の発展 最後の車両譲渡、強い協力関係は今後も続く

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一方、JR東日本側にとってのメリットや学べる部分は何だろうか。廣橋氏は、海外事業の強化や経験づくりの一環として、一部の国際担当者だけでなく現場社員も海外の鉄道関係者と接点を持つ機会が当たり前になっていくことだと言う。

京葉車両センターで行ったKCI社員の研修。JRの現場社員にとっても海外の鉄道関係者と触れ合う貴重な機会になっている(写真:JR東日本)

先の京葉車両センターでの研修で、故障発生時の調査および早期復旧に対応する実習を担当したある社員は、「KCIの方々は安全・安定輸送を支えるために熱心に聞き入り、日本の鉄道の良い部分を多く吸収していただけたのではないか」と言う一方で、「自身も人に伝える大切さを学び、またインドネシアの鉄道についても学ぶことができ非常にいい経験になった。この経験を今後の業務へ活かしていきたい」とコメントしている。

普段、外国人と触れ合うことはほとんどない鉄道の作業現場で、定期的にKCI社員が研修を行うことが現場に新たな風を吹き込んでいる。長い目で見れば、ここから海外鉄道プロジェクトを推進する人材が育ってくるだろう。

まだまだKCIの課題は多い

もちろん、まだまだKCIに不足している部分もある。例えば、指差喚呼が定着したといってもやることだけが目的化してしまい、肝心の目視確認をしていないケースがある。

車掌は確かにドア開閉時に指差喚呼をしているが、ドアが完全に閉まる前に乗務員室に入ってしまい、出発監視や後方確認がなされていない。駅員もホーム上に立つことはなく、駅舎の室内から放送しているなど、安全への意識はまだまだ低い現状がある。年に数回発生する軽微な脱線事故も気がかりだ。重大な事故に発展する恐れがあるが、原因の決定的追究が不足しているから減少しない。

また、長距離列車も入り混じった過密ダイヤの中で最短3分おきに運転しているにもかかわらず、ATS(自動列車停止装置)などの保安装置は導入していない。カーブの先に停車中の電車に後続電車が追突するという事故が2015年に発生したが、一時的に保安装置導入の議論はあったもののいまだに具体化はしていない。

それこそ、205系に車上装置が残存している日本のATS-Pを導入できれば他国製車両参入の抑止力にもなる。信号関係一式を日本規格で固めてしまえば、ジャカルタという日本にとっての「聖域」を守る最大の防御になる。ただ、これは規模からしてJR東日本とKCIだけで実行できるものではなく、日本政府の協力も必要になる。

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