JR東と「205系」が支えたジャカルタ鉄道の発展 最後の車両譲渡、強い協力関係は今後も続く

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相互協力の覚書は昨年10月に更新された。新たな協力分野は「教育と研修」「車両と部品の供給」「公共交通志向型都市開発(TOD)」だ。前者2つはこれまで実施していた協力内容をより具体的に明記したもので、車両導入がストップしても引き続き実施していくことがわかる。KCIとしても、過去5年間の実績からその重要性を認識しているのだろう。

3つ目については、鉄道事業だけではなく非鉄道事業についても今後の協力が期待される内容だ。現在、TODの一環で一部の駅が駅ビル・アパートメント併設型へ改修工事中であるが、駅ナカ開発などにJR東日本の知見が活かされるかもしれない。

覚書はKCIだけでなく、親会社のKAIも含めた3社での相互協力となっている。その理由についてJR東日本は、同社の経営ビジョン「変革2027」において国際事業のビジネスモデル確立や「アジアを中心により豊かなライフスタイルを提供する」との目標を掲げる中、「インドネシアは軌間が同じであること、親日的な国であることから重要な国の1つと位置付け、JR東日本グループ全体でKCIだけにとどまらず、鉄道の発展に協力している」(同社広報)ためと説明する。

今後の協力関係にも期待

実はこの10月から、KCIは中部ジャワのジョグジャカルタでも近郊列車の運行を開始している。今やKCIはインドネシアの唯一の電車オペレーターとして実績を認められており、ジョグジャカルタ地区での運行区間拡大、さらにはバンドン地区をはじめとする他都市近郊区間への参入も予定されている。まずは11月にジョグジャカルタ―ソロ間(約60km)の電化が完成するが、今後の状況によってはジャカルタ以外の都市でも205系の活躍が見られるようになるかもしれない。

政府による中古車両の輸入停止の動き、またコロナ禍における経営状況の悪化という不安な話題が多い中、KCIのエリア拡大は明るいニュースである。JR東日本と二人三脚でこの5年間を歩んできた努力の結果だ。KCIのファディラ前社長は「ジャカルタに新車を導入し地方に中古車両を転配したい」と語っていたが、ついに現実のものになる可能性がある。

 

しっかりした造りのステンレス製車両は、車体については50年以上使っても問題ないことが証明されている一方、今回導入された武蔵野線車両以外の205系はそろそろ制御装置が更新の時期に近付いているといえる。下回りを換装するようなことになれば、また新たな協力関係も構築できるうえ、日本の最新型と同様に改修されれば、人的交流もさらに広まるだろう。車両譲渡という目に見えるシンボリックな出来事はしばらく見られなくなるかもしれないが、JR東日本とKCIの協力関係がますます強固なものになることを願っている。

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