JR東と「205系」が支えたジャカルタ鉄道の発展 最後の車両譲渡、強い協力関係は今後も続く
205系の譲渡が始まって7年、残念ながら追突事故で12両が失われたが、それ以外の車両は安定的な運用が続いている。一部では「使い捨て」と評されることもある途上国への中古車両譲渡シーンにおいて、ジャカルタに渡った205系はほぼ100%という驚異的な稼働率を誇る。
「車両故障を防ぐにはスペアパーツの供給を止めないことだ」と語るのは、2019年10月からKCIに籍を置く廣橋武志クオリティーコントロールマネジャーだ。廣橋氏はJR東日本からKCIへの出向者として3代目。実は前職で京葉車両センターの副所長を務めており、日本からの車両の送り出しと、インドネシアでの受け取りの双方を経験するという初の事例の持ち主である。
2019年9月1日付記事「ジャカルタが日本製『中古電車天国』になるまで」でお伝えした通り、以前は部品メーカーも中古車両へのスペアパーツ供給に積極的ではなかった。それが、JR東日本との協力開始以来、大きく改善されている。とくに205系に関しては、オーバーホールの計画に合わせて必要部品の計算と予算確保を行い購入しているそうだ。
205系メンテは今や「お手のもの」
もっとも、いくら部品が供給されても現場作業者の技術レベルが低ければ、メンテナンス精度は落ちる。だが、メンテナンスの技量も向上している。
従来、JR東日本による車両メンテナンスの研修は、大宮総合車両センターなどで車体保全、装置保全、指定保全などのヘビーメンテナンスを中心に行っていたが、2018年には京葉車両センターで初めてライトメンテナンスに関する研修を実施した。廣橋氏は同センター副所長としてその現場を実際に目の当たりにしている。JR社員立ち会いのもと、1週間にわたって機能保全(3カ月に1回実施する検査)などの作業を実施したが、技術的に劣る部分はなかったという。KCIに205系が導入されてからすでに5年が経過し、205系のメンテナンスならもはやお手のものと言ったところだろう。
実際にインドネシア側で見てみても、例えば一部の作業を別の作業場に移したり、部品管理をしっかりするようになったりと、現場が主体的に動き、作業が洗練されてきているという。このように現場の作業は一定レベルまで向上しているため、今後はメンテナンスに関わるマネジャー層への現場管理研修を進めていきたいとのことだ。
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