JR東と「205系」が支えたジャカルタ鉄道の発展 最後の車両譲渡、強い協力関係は今後も続く
205系譲渡の動きが進みだしたのは、今をさかのぼること8年前の2012年。その後の数年間で205系が大量に廃車となることは確定しており、比較的車齢が若く扱いも容易なことから、インドネシア側は調達に意欲を見せていた。だが、2009年ごろには京葉線を引退した205系の調達に失敗しており、その頃のKCI(当時はKCJ)はJR東日本との強いパイプを持っているとは言えなかった。
そんなとき、動いた人物がいる。KCI の親会社であるインドネシア鉄道(KAI)のイグナシウス・ジョナン社長(当時)である。ジョナン氏はKAIの企業改革の真っただ中で、日本の国鉄改革とその後のJR東日本の企業経営に強い関心を抱いていた。そのジョナン氏が自らJR東日本をはじめとした関係各所を訪問し、輸送力増強のためのインドネシアへの車両輸出について議論が交わされた。
JR東の海外戦略と一致したタイミング
同じころ、JR東日本は「グループ経営構想Ⅴ~限りなき前進~」を発表した。この中では「地域に生きる。世界に伸びる。」というコンセプトワードが設定され、海外事業が同社の屋台骨の1つに位置づけられた。
グローバルな挑戦への決意を示した同構想の策定と、システマティックな鉄道を目指して変革期を迎えていたインドネシア側のタイミングがちょうど重なり、JR東日本にとって海外鉄道事業者への協力という点からも車両譲渡は有効な施策と考えられた。そして2013年、205系譲渡の第一弾として、埼京線用180両のインドネシアへの輸出が実現したのである。裏を返せば、経営構想策定後すぐに取り組んだのがKCI案件であり、JR東日本の海外戦略においてインドネシアが重要な位置づけにあることがうかがえる。
このとき、KCI側からは車両を安全に長期間使用するための技術的支援も行ってほしいとのリクエストがあり、車両の到着にあわせ日本から現業のメンテナンススタッフが派遣され、簡単な車両メンテナンスの技術支援も実施した。従来の車両譲渡は、基本的に品質保証やアフターケアなしの「中古機材」の売却というスタイルであったことを考えると、大きな進歩であった。
具体的な協力関係が始まったのは、2014年に「相互協力の覚書」が締結されてからのことだ。この協力分野には「鉄道オペレーション」「メンテナンス」「マネジメント」が含まれていた。その後は車両メンテナンスのほか、乗務員教育や駅職員のサービス向上などについてのプログラムが日本、インドネシアで定期的に実施され、2015年からはJR東日本からの出向社員がKCIに配置され、さまざまな指導や助言を行っている。
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