ニトリ、TOB中の「島忠買収」に待ったの背景事情

DCM提案に対抗、首都圏の店舗網拡大が狙いか

こうした一連の動きにDCMも影響され、島忠との経営統合を持ちかけた。両社は統合によりプライベートブランド(PB)商品の開発などを強化する方針を掲げた。さらにDCMは2019年度にカインズへと明け渡した売上高業界首位の座も、島忠の買収で奪還する算段だった。

しかし、ニトリの参戦によって、これらの構想は根底から崩れることになりかねない。

ニトリは1967年に似鳥昭雄・現会長が北海道で創業。1990年代半ばに本州進出を果たして以降、一気に家具業界で圧倒的首位へ登り詰めた。だが、意外にも「小売り企業のM&Aは過去にない」(同社広報)という。

島忠買収で売上高1兆円達成も

ニトリはこれまで、2000年に家具製造のマルミツ、2011年にカーテンの仕入れや製造を手がけるホーム・デコなどを連結子会社化したほか、2017年に中古住宅リフォームのカチタスの株式を34%取得している。製造機能の増強を主眼としたM&Aには積極的だった一方、販売面では「ニトリ」やインテリア雑貨の「デコホーム」、アパレルの「N+」などの業態はいずれも一から自社で開発し、店舗網を広げていった。

DCMホールディングスによる島忠買収を発表したDCMHDの石黒靖規社長(右)と島忠の岡野恭明社長(左、記者撮影)

とはいえ、今後の事業拡大の方向性を考えれば、ニトリがこのタイミングで小売り企業買収に打って出ることは不思議ではない。同社は従来、2022年に1000店・売上高1兆円、2032年に3000店・売上高3兆円の中期目標を掲げてきた。

しかし、2021年2月期の会社予想では666店、売上高7026億円(2020年2月期は607店、売上高6422億円)にとどまる。主力の国内既存店の販売は好調だが、拡大をもくろんだ中国で人材育成などが追いつかず事業を立て直し中であることや、国内の新規出店余地が限られてきたことが、目標に対して成長ペースが追いついていない背景にある。もし島忠(2020年8月期の店舗数60店、売上高1535億円)を傘下に収めることができれば、2022年中に売上高1兆円の達成も射程圏に入ってくる。

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