クボタ「自動田植え機」普及への期待とハードル 車だけじゃない!農機で進む自動運転の最前線

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こうした農業従事者の高齢化や離農が進む中で、日本の農業には大きな産業構造の変化が起き始めている。“担い手”のいなくなった農地が、やる気のある比較的大規模な農家や農業事業者に集約され、1経営体当りの耕作面積が大型化しているのだ。実際、20ヘクタール以上の水田を耕作する大規模農家(農業事業者含む)の平均作付面積を見ると、2014年の36ヘクタールから2018年には43ヘクタールにまで広がっている。

井関農機の無人トラクターの操作画面。タブレットを通じて車体のカメラで周囲の状況を見ることができる(記者撮影)

作付面積が大きくなれば、極力人手をかけずに済む効率的な作業が必要になる。しかも、農業の熟練経験者が減っていき、今後の農業を担う働き手は若い世代が中心となる。そこで、省力化につながり、農業経験が浅くても操作できる自動運転農機へのニーズが高まっているわけだ。

農機メーカーにとっても、こうした自動運転技術は事業の将来を左右する極めて重要なテーマだ。クボタは10月初旬、連携を続けてきた自動運転分野でアメリカのエヌビディアとの戦略提携に踏み込むと発表した。

エヌビディアは画像処理半導体(GPU)の世界最大手で、高い計算処理能力を持つGPUとそれを活用したAI開発プラットフォームを提供している。クボタはそのエヌビディアの最先端技術をフルに活用して、天候や農作物の生育状況などを見ながら自動で適切な作業を行う「完全な無人運転農機」の開発を目指すという。

普及への最大のネックは製品価格

着実に進む農機の自動運転化だが、普及に向けたいちばんの課題は値段だ。例えば、クボタ製の100馬力の自動運転トラクター「MR1000A(無人仕様)」の税抜き価格は1468万円で、自動運転機能がない同格のトラクター(同954万円)より500万円以上高い。馬力がより小さなタイプで見ても、自動運転タイプと通常のトラクターとでは1.5倍程度の価格差がある。

同社の佐々木真治・研究開発本部長は、「(無人運転の普及には)コストは大きな壁になる」と話す。外部から調達するセンサー類などの価格がまだ高く、現状では価格を抑えることが難しい。「自動車で自動運転が普及して、スケールメリットでセンサーの価格が下がらないとコストダウンはなかなか厳しい」(佐々木本部長)。

加えて、技術的にもまだ課題がある。現在の自動運転農機はあくまで私有農地での無人運転を対象としており、自宅などから農地までは有人運転で移動する必要がある。また、農地で無人運転させる際にも、安全性確保のための監視が大前提だ。

効率化を追求するなら、将来的には完全無人化が求められる。ただし、そこに至るまでにはまだ技術的な課題が複数あるうえ、まだ公道での完全自動運転走行は法律で認められていない。GPSの精度や通信インフラなどインフラの整備も必要になる。自動運転農機の普及に向けたハードルは決して低くない。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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