日本の「デジタル化推進」を阻む根本的な問題 「電波の開放」が未来の変革に繋がっていく

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そうした中で、OECD諸国で唯一、「電波オークション」を拒み続けてきたのが日本だ。議論は前世紀からあったが(1995年~行政改革委員会規制緩和小委員会など)、総務省(前世紀には郵政省)、携帯事業者・放送事業者など既得権者が強力に反対し、導入が阻まれてきた。

なお、世界各国でオークションが導入されているのは基本的に携帯電話への新たな割り当てに際してだ。本来は放送事業者はあまり関係ないはずだが、一緒に対象にされるとの危惧からか、強力な反対を続けてきた。

オークションに反対してきた理由

規制改革推進会議での議論などを経て、2019年になってようやく、電波法改正で「価格競争の要素を含む新たな割当方式」が創設された。先進各国から20年以上遅れ、現在5G用の1.7ギガヘルツ帯で導入が準備されつつあるが、価格競争がどの程度機能するかはこれからの段階だ(制度上は、価格競争の要素が99%でも1%でもよいことになっている)。

総務省や携帯事業者がオークションに反対してきた理由は、(1)オークションを導入すればコスト負担が嵩み、通信料金を上げざるをえなくなる、(2)コスト負担から設備投資が遅れる、(3)外資参入で安全保障上の問題が生じる、といったことだ。

このうち(3)は、必要な外資規制は導入すればよいだけの話で、そもそもオークションとは関係ない。比較審査方式のもとでボーダフォンが参入していたことも周知の事実だ。

(1)と(2)についてはどうか。日本の現状をみれば、通信料金は、オークションを導入した各国と比べ、むしろ高い。設備投資では、4Gの通信品質は比較的良かったが、5Gではアメリカ・韓国などに大きな後れをとった。

結局、日本の携帯事業者は、世界で稀な「安価に電波を利用できる環境」を与えられながら、これを活かせず、寡占状態で顧客を囲い込むビジネスモデルに安住してきた。

その一方で、アップルとの不当な取引関係など、GAFAはじめグローバルな巨大事業者からは利益を吸い上げられ、結局は消費者に転嫁してきた。

希少な電波の帯域上で、不健全な市場ができあがっていたわけだ。総務省は長年、「電波割り当ては自分たちに任せてもらえれば、最も有効な電波利用を実現できる」と主張していたが、この結果をみても、主張は破綻しているように思える。

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