日本の「デジタル化推進」を阻む根本的な問題 「電波の開放」が未来の変革に繋がっていく
菅政権で「携帯料金引き下げ」が課題とされているが、根本的な課題は不健全な競争環境だ。総務省は、携帯電話市場において、健全な競争環境の実現に失敗してきた。
前世紀からの歴史に話を戻すと、1980年代の初期には「規制緩和」(deregulation)という言葉が世界中で用いられた。これが1990年代以降「規制改革」(regulatory reform)と言い換えられるようになる。考え方は、規制は単にすべてなくせばよいのではなく、必要なルールは設けて競争を促進し、市場が適正に機能するようにしなければならない、ということだ。
例えば、電電公社を民営化して通信自由化がなされた当時、NTTは巨大な存在で、ただ「新規参入が可能」といっても独占状態が続くだけだった。そこで、支配的事業者に特別な義務を課す「ドミナント規制」を導入し、NTTの通信網の開放を進めた。市場メカニズムを実質的に機能させるために「競争促進」を行い、その成功で通信産業は大きく変貌した。
新規参入と競争を促進する必要
今なすべきことは、かつての通信行政に改めて学び、新規参入と競争を促進し、本来の「規制改革」を実行することだ。例えば、電波割り当てでは、新規参入者への優遇などもあってよいはずだ。国内市場だけでなく、世界での競争環境にも目を向けなければならない。
グローバルな巨大企業への独禁法適用は課題だ。また、世界ではAT&Tがタイム・ワーナーを買収するなど、業態を超えた大再編が進む。日本で大再編を妨げかねない規制(例えば、認定放送持株会社の議決権保有は3分の1までしか認められないなど)は見直していく必要があろうだろう。
また、本稿前半で述べた「行政」「放送」帯域から「新たなニーズ」への切り替えも不可欠だろう。こうした規制改革を本気で進めず、その場凌ぎの料金引き下げだけに終わるようならば、日本の経済社会の未来は拓けない。
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