日本の「デジタル化推進」を阻む根本的な問題 「電波の開放」が未来の変革に繋がっていく
使い勝手の良い帯域は、古くからの住人にとっくに占有されている。そこで、いかに帯域をあけるかが重要になる。
「電波の開放」は、最先端で未来を切り拓けるかどうかに直結する。このため、アメリカではオバマ政権下の2012年、まず「行政」をターゲットに、連邦政府用の周波数から最大1000メガヘルツ幅を官民で共用する「周波数スーパーハイウェイ」構想が打ち出された。イギリスでも2010年頃から目標を定めて公共用周波数の民間開放が進められた。
日本でもやや遅れて2017年頃から、政府の規制改革推進会議や自民党行政改革推進本部でこうした議論がなされた。当時の河野太郎本部長のもとで、「ブラックボックス状態の解消」「公共用周波数の資産価値の精査を行い、政府資産として管理・有効活用」などを求める提言も出された(自民党行政改革推進本部官民電波利活用PT「公共用周波数の民間開放に関する緊急提言」2017年5月)。だが、その後の実現状況は不十分で、課題が残されている。
ブラックボックス的な色彩が濃い
「電波」が特殊なのは、政府が割り当て権限を握り、特に日本の場合、「すべては総務省の判断次第」というブラックボックス的な色彩が濃いことだ。
不動産と対比してみると、例えば賃料の安いエリアで、ゆとりある広大なオフィスを構えている企業があったとする。あるとき何らかの事情でそのエリアのオフィス需要が急激に高まれば、賃料が上がり、その企業は自ずと余剰スペースを放出し、新規参入者が入りやすくなる。
ところが、電波ではこうしたメカニズムが働かない。総務省が割り当てを行い、いったん割り当てがなされれば、行政部門なら通常無料、民間事業者でもリーズナブルな賃料(電波利用料)で使える仕組みだからだ。
もちろん、有効に利用されているかどうかを総務省がチェックし、必要に応じ再編することにはなっている。ただ、この仕組みの限界は、旧来の占有者に自ら効率化を図るインセンティブがなく、また、政治力の強い占有者にはどうしても手を出しづらいことだ。
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