「業務スーパー」が圧倒的支持を集める納得の訳 店内演出より、商品で「買い物の楽しみ」を訴求

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前述したように常連客が多く、集客力の高さと客層も安定している。東京都内の住宅街にある店舗には、低価格訴求のスーパーには異質な高級外車で訪れるお客も目立つ。さまざまな業態を手がけるオーナーにとっても、業務スーパーは魅力的なブランドなのだろう。

「どんどん変化する消費者」への対応

「消費者はどんどん変化する」と言われる。「不易流行」(時代とともに変わる・変わらない)における「流行」の視点だが、この1年でも消費者の意識はかなり変わった。

例えば昨年の秋は、まだタピオカブームが残り、業務スーパーでもタピオカ関連商品が大きく伸びた。今年のコロナ巣ごもり期は同社に限らず、当初は冷凍食品の買いだめが起きたが、安定供給されることがわかり落ち着いた──といった話を各取材で聞いてきた。

「買い出し」時期が一段落すると、別の意味での「買い物の楽しさ」を求めるお客が増える。近年、神戸物産は「馳走菜」(ちそうな)という惣菜ブランドにも注力する。

「日常の食卓代行」をコンセプトに掲げ、例えば「ジャンボチキンカツ」は岡山県のグループ養鶏場で育てた鶏が原材料だ。これ以外に弁当や丼ものを揃え、ポテトサラダやおはぎもある。独自店舗と併設店舗があるが、まだ東京都区内にはない。

「惣菜市場は拡大しており、『馳走菜』は積極的に加盟店様に勧めています。業務スーパーの商品開発では、これまでよりもカテゴリーも価格帯も幅を広げて、広い客層の需要に応えられるように努めます。一方、東京23区内は店舗面積が十分に確保できない店が多く、坪当たりの売り上げを上げるために什器の開発などに力を入れています」(花房さん)

成長が続く「業務スーパー」の課題は、「商品の欠品」と「顧客対応」だろう。前述の「天然酵母食パン」も以前は、早々と品切れになっていた。また、店舗従業員が少なくクレームも発生。そこで神戸物産内にCS推進部をつくり、加盟店への運営教育にも力を入れている。

ただし、あまり本部が口を出しすぎると、現場は反発する。現在は総じてうまくいっているが、店舗数が増えれば増えるほど、求心力と遠心力のバランス運営が求められる。

課題は残るが、コロナ禍の成長ブランドとしても興味深く、消費者視点でも見続けたい。

「馳走菜」の弁当・丼類は298円という安さだ(写真:神戸物産)
「馳走菜」のフライバイキング売り場(写真:神戸物産)
高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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